昨年(2018年)以来、従業員数1万人超の大手企業で、相当数の従業員を畑違いの事業部門に、強制的に異動させる配置転換が流行している。
発端となったのはメガバンクのリストラだが、すでに富士通などの電機大手にも波及した。
【参考リンク】「富士通、配置転換5000人規模 ITサービス注力で」(日本経済新聞デジタル版 2018年10月26日付)
だが、一般に与えたインパクトという意味では、買収した介護事業への転籍を打ち出した損害保険ジャパンだろう。
【参考リンク】「損保ジャパン社員『介護へ配置転換』次はあなたの会社かもしれない」(講談社マネー現代 2019年7月2日付)
これらの配置転換により、日本の雇用制度は100年に一度の転換点を迎えていると言ってもいい状況だ。
給与引き下げでも受け入れざるを得ない
従来もグループ内の配置転換はあるにはあったが、今回流行っているそれは従来のものと比べて顕著な違いがいくつかある。
まず、非常時ではなく平時に行われている点が注目される。つまり、今後は経営危機ではなくても、ある日突然ルーチンワークの一環として、配置転換が実施される可能性が高いということだ。
しかし、従来との最大の違いは、多くの企業が配置転換に際して、年収の2~3割りほどの、給与の引き下げもセットで実施している点だ。
「日本型雇用でそんな大幅な不利益変更が可能なのか?」と疑問に思う向きも多いだろうが、「未経験の業務に異動になったため、賃金を見直す」という合理的な理由は成立する。厳密にいえば争う余地がないわけではないが、労働組合が呑んだ以上は個人で会社と争うのは現実的ではないだろう。
筆者はこの「労組が呑んだ」点がポイントだと考えている。労組といえども「もはや働かない正社員に年功賃金を払って飼殺す余裕などない」という認識で経営側と一致したということだ。