統合型リゾート施設(IR)をめぐって政府は2019年9月4日、整備に関する基本方針案を発表して数項目にわたる立地区域の選定基準を示した。その場所はIR整備法で最大3か所とされ、すでにいくつかの県や市が名乗りをあげている。
建設地は2020年中にも決まり、早ければ25年にも開業予定という。着々と構想は進んでいるようだが、IRの目玉の一つはカジノで、いまだ導入に反対する声もあるなど、どこかすっきりしないような感じでわかりにくい。そう感じている人にはとくに、本書「IRはニッポンを救う! カジノ? それとも超大型リゾート?」は、格好の解説書。
「IRはニッポンを救う! カジノ? それとも超大型リゾート?」(渋谷和宏著)マガジンハウス
政府が基本方針案発表、場所は来年決定
著者の「シブチン先生」こと渋谷和宏さんは、日経BP社で数々のビジネス誌を手がけたのちに経済ジャーナリストとして独立。作家として創作活動も行っており、テレビのコメンテーターとしても知られる。
本書では、シブチン先生が引率して、IRについて何もしらないJ平(じゅんぺい)やK子といった人たちがリサーチする格好で展開。予備知識などなくて理解しながら読み進められる。
この9月4日に発表されたの基本方針案は、2018年7月に成立したIR実施法(正式名称「特定複合観光施設区域整備法」)を受けてのもの。「この法律によって国がIRについての基本方針を定め、IRを誘致したい自治体から申請を募ることになったんだ」とシブチン先生。この法律ができるきっかけは、10年にIR誘致を目指す超党派の議員連盟が発足したこと。そこから、カジノを解禁するなどの法律制定の動きが広がった。
その法律の一つが16年12月に成立したIR推進法(「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」)。シブチン先生は、この法律が「日本で『IR=カジノ』という見方が広がったきっかけ」とみる。「IR推進法の成立によってカジノ解禁の道筋が示されたので、一部のメディアがIR推進法をカジノ推進法と呼んだ。ここから『IR=カジノ』という見方が広がっていったのではないでしょうか」