転職はいまや珍しいことではなくなり、就業者に占める転職希望者は8人に1人の割合でいるといわれる。転職希望者のためのウェブサイトを運営している人材サービス大手のエン・ジャパンが、「ミドルの転職」を利用している転職コンサルタントを対象に「転職すべき人・現職にとどまるべき人」についてアンケートを実施したところ、50%以上が「面談した3人に1人は現職にとどまるべき」と回答した。
「誰でも簡単に」――というわけにはいかない、市場の状況があるようだ。
「希望と市場価値にギャップ」
企業の事業年度などから、1年のうちで転職者の採用活動が活発化するのは、2~3月と8~9月。1年後に東京五輪・パラリンピックを控える2019年はさらに活発化している。アンケートは、そうした時期的なこともにらんで行われたとみられる。
「面談した人(転職希望者)のうち、転職せずに現職にとどまるべきと思う人は何割ほどか」と質問したところ、50%が「3割以上」と回答。2年前のこの調査では44%だった。転職市場が拡大するなかで、市場にフィットしない人の売り込みも増しているということがうかがえる。
「現職にとどまるべき理由」(複数回答)の1位は「本人の希望と、転職市場での市場価値にギャップがある」で、断トツの77%。次いで「転職回数が多く、これ以上の転職には大きなリスクが伴う」が39%、「キャリアップできない理由が会社にあると思っている」が34%、「転職により実現したいことが不明確」の34%、「未経験の業種or職種への転職を希望している」の32%――と続いた。
転職希望者は、自らその「是非を見極める」ことが求められるが、そのためにはどうすべきか。転職コンサルタントらのチェックが多かったのは「解決したい課題を整理し、解決方法を検討する」が59%。次いで「キャリアの棚卸しを行い、キャリアプランを見直す」の46%、「コンサルタントにキャリア相談を持ちかける」の43%などの選択肢が多く選ばれた。
転職市場は2010年以降、毎年拡大
総務省の「労働力調査年報」(2018年)によると、転職者数は2010年に283万人と、前年の320万人から大幅ダウンして以降は毎年増加。18年には329万人を記録した。就業者に占める転職者の割合(転職者比率)は18年の平均で4.9%と、前年と比べて0.1ポイント上昇した。男女別、年代別にみると、男女とも15~24歳が最も高く、男性は10.4%、女性は12.2%。45~54歳以下の各年代別では女性が男性よりも高く、55~64歳以上の各年代別では同率だった。
転職希望者は、実際に転職した人数の2倍以上いるとみられるが、エン・ジャパンでは、アンケート回答者のコンサルタントによる「漠然と転職したいという人は失敗する傾向にある。現職の問題点と転職先に求めることを明確にすること」などのアドバイスを紹介。現職の問題点が転職しないと改善できないのかをコンサルタントに相談することを含めて、しっかり調べることを勧めている。
なお、アンケートは19年8月20日~26日にインターネットで実施。エン・ジャパンのウェブサイト「ミドルの転職」を利用する転職コンサルタントを対象に、132人から回答を得た。