ハローキティやマイメロディなど、世界でも「kawaii(かわいい)」ブームを作ったサンリオ。そのキャラクターたちと親しめるテーマパーク、サンリオピューロランド(東京都多摩市)が好調だ。2019年7月31日に発表されたサンリオの「20年3月期(第1四半期=4~6月)」決算によると来場者数は前年同期比8.4%増だった。
しかし、サンリオピューロランドは数年前までは不況の影響もあって長く赤字経営続きで、あちらこちらにほころびが目立ち、そのため一層客足を遠のかせる負のスパイラルにはまっていたという。そんなどん底状態にあったピューロランドに乗り込み、救世主となったのは元サンリオ社員の女性だった。
「来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり」(小巻亜矢著)ダイヤモンド社
社長に宛てた上申書きっかけ
本書「来場者4倍のV字回復! サンリオピューロランドの人づくり」の著者、小巻亜矢さん(現サンリオエンターテイメント社長)がその女性。小巻さんが手腕を発揮したのは、経費の見直しなどではなく、従業員間のコミュニケーションを重視した組織再生、人材育成だった。
小巻さんは大学卒業後にサンリオに入社。結婚して退社後、しばらくしてから再訪したピューロランドのすさんだ様子に驚き、早速再建案をしたため、サンリオの辻信太郎社長(当時)に上申した。そして、あにはからんや、その実行の任務を依頼されるのだが、個人的にはそれまでの間に、出産、離婚、そして闘病、心理学を学ぶため東京大学大学院への進学などを経験しており、本書はビジネス書ではあるが、波乱万丈のバイオグラフィーとして読むこともできる。
ピューロランドの開園は1990年。世界でも数少ない屋内型テーマパークで天候に関係なく楽しめることなどから開園直後は盛況だったが、その後客足が爆発的に伸びるようなことはなく、来場者数は91年に約195万人を記録したあとは長く、前年の実績を下回ることが続いていた。
小巻さんがピューロランドを再訪したのは開園の年以来「15年ぶり」の2014年。その様子を目の当たりにして、15年前との違いにがくぜんとする。「全体的に暗く、どんよりしていました」。スタッフに笑顔がなく、閑散とした園内で手持ち無沙汰だ。パレードが何時からか尋ねると「わかんないっすね」。レストランの食事は温かいもののはずが冷たい。「それ以前に食べたいと思えるメニューがない」ありさまだ。また来たいと思わせる魅力はどこにもない。これでは客は減るばかりだ。
小巻さんは惨状を見かね、同園は、改善すればまだまだ可能性があることを辻社長に上申。すると「君がやってみないか」と問われ、まずは、顧問という立場でピューロランドに乗り込むことになった。