「マインドフルネス」とは、マサチューセッツ大学医学大学院(英語版)教授の、ジョン・カバット・ジン(Jon Kabat-Zinn)氏によって確立された理論です。
仏教に心理学をミックスさせることで、ストレスに対応する手段として提唱しました。現在では、ビジネス、瞑想、スピリチュアル、など活用領域も広くなっています。
「怒りにとらわれないマインドフルネス」(藤井英雄著)大和書房
マインドフルネスを知らない人のために
著者の精神科医で医学博士の藤井英雄さんは、「怒りの感情」のメカニズムを解析し、コントロールする方法をまとめています。
「マインドフルネス」の瞑想は、Googleをはじめ、多くのグローバル企業で導入されて、日本でも関心が高まっています。マインドフルネスを、うまく実行できれば、仕事のパフォーマンスは向上しますが、事前にメリットとデメリットについて理解したほうがいいでしょう。
臨床心理学と精神医学分野では、マインドフルネスは比較的ポピュラーなものでした。詳しく説明をすると抽象的になりやすいのでわかりやすい事例を紹介します。
いまやお正月の風物詩、箱根駅伝をご存知でしょう。ここで2015年から2018年まで総合優勝を果たしたのが青山学院大学です。同校が躍進した秘密は「マインドフルネス」にあるといわれています。
第93回箱根駅伝(2017年1月2~3日)で3連覇の快挙を遂げた際、原晋監督は、調子の波が激しく、よいときはものすごい力を発揮するタイプの選手(秋山雄飛選手)を往路の3区に起用しました。
駅伝は、監督が乗ったクルマが並走して声をかけることができます。どんな言葉をかけるかが選手の走るモチベーションを左右するので、声かけは重要です。原監督は選手に向かって、「Perfumeのリズムでいくぞ! Go Go」と声をかけます。
秋山選手の顔がニヤッと崩れたあと、腕の振りが明らかに変化し、先頭を走っていた神奈川大学の選手を抜き去り、2年連続の区間賞にも輝きます。マインドフルネスの効果で、精神的な能力を引き出した好例といえます。
青学・原監督と他の駅伝監督との違いは?
脳をコンピューターにたとえてみましょう。記憶された膨大な過去のデータはハードディスクに蓄えられています。そして、現実に起こるすべてのことに対応していく力がメモリです。そのメモリを食うのが怒りなどのネガティブ思考ですから、マインドフルネスの状態となっておくことが大切なのです。
藤井さんは、
「お釈迦様の悟りの心をルーツに持ち、仏教の枠組みをこえて進化したマインドフルネスはGoogleなどの欧米の大企業の社員研修に採用されて大ブレークして日本にも上陸してきました。最近はテレビでも紹介されるようになりましたので、みなさんもどこかでマインドフルネスについて聞いたことはあると思います」
「10年前であればマインドフルネスを習得しようとすれば座禅道場や瞑想教室に入門するしか方法がありませんでした。しかし今では自宅で取り組むことも可能です。ところが、実際に取り組み、活用している人はまだまだ少ないのです。それはマインドフルネスのエクササイズが習慣化できないからです」
と、説きます。
さて、先ほど紹介した箱根駅伝では、他大学の監督はどのように声かけをしていたのか、ご存知でしょうか?
声を張り上げて選手を鼓舞する監督が圧倒的に多かったようです。このような声のかけ方では、やる気をそいでしまう危険性があります。毎日、少しの時間でも継続することで効果があるといわれるマインドフルネス。この機会にいかがですか。(尾藤克之)