レジに2時間、駐車場3時間待ち! なぜ中国人は「コストコ信者」になったのか?

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

   上海に「コストコ信者」が急増!?

   米国の会員制スーパー「コストコ」が、中国で初めての実店舗を上海郊外にオープンして話題をさらっています。開店早々、あまりにも多くの客が押し寄せてまさかの「閉店」! 米中両政府の貿易戦争をあざ笑うような順調な滑り出しに、コストコは早くも2号店の計画を発表したほどです。

   それにしてもなぜ、コストコは中国で熱狂的に迎えられたのでしょうか。

  • バーゲン好きがハマった!? 中国・上海で「コストコ」大人気(写真はイメージ)
    バーゲン好きがハマった!? 中国・上海で「コストコ」大人気(写真はイメージ)
  • バーゲン好きがハマった!? 中国・上海で「コストコ」大人気(写真はイメージ)

「もう店に来ないで!」コストコが異例のメッセージ

   上海市郊外にできたコストコ中国1号店のオープニングに大勢の客が殺到して、たった5時間足らずで店を閉店!

   コストコが「もう店に来ないで!」と異例のメッセージを出すほどの騒ぎとなりました。

Costco will suspend business in the afternoon. Please don't come.
(コストコは午後の営業を一時停止します。どうか店に来ないで!)
suspend:一時停止する、しばらく見合わせる

   確かに、世界中に発信された映像を観ると、買い物客でごった返すコストコ店内は身動きができないほどの混雑ぶりです。身を乗り出してローストチキンを奪い合う人、棚によじ登って大量の商品をかき集めようとする人など、コストコに「熱狂」する買い物客の様子が、世界中のメディアで次々と報じられました。

Costco has been clogged up with crowds
(コストコは買い物客でギュウギュウだ)
clog up with~:~で詰まる、目詰まりする

Costco has built a cult
(コストコは、熱狂的な信者を生み出した)
cult:カルト、熱狂的な信者、信仰

Costco got an unexpectedly frenzied welcome from Chinese shoppers
(コストコは、中国人消費者に、思いのほか熱狂的に受け入れられた)
unexpectedly:予想外に、思いのほか
frenzied:狂った、凶暴な

   22台のレジをフル稼働したものの、お会計は最大2時間待ち。駐車場は3時間待ちで、周辺の道路は警官が出動して交通整理をするほどの混雑ぶり。さらに、遠方から詰めかける客で高速道路まで渋滞するなど、まさしく「カルト」(信仰)という表現がぴったりの予想を超えた「コストコフィーバー」でした。

   ちなみに、翌日からは「2000人限定」で入場制限を行ったものの、今度は代行で大量購入をする「代行業」が現れるなど、しばらく混乱は続いているようです。

中国人の「バーゲン愛」に火がついた!

   それにしても、米中貿易戦争が激しくなるなか、コストコの中国進出はなぜ、これほどまでに順調な滑り出しを見せているのでしょうか。

   じつは、海外の小売業にとって、中国市場は難攻不落のマーケットでした。コストコ進出の数か月前には、フランスの大手スーパー、カルフールが中国市場から撤退。英国の大手スーパー、テスコも撤退のウワサが耐えません。あのアマゾンですら中国でのネット通販から手を引いたほどです。

   海外メディアは、コストコ独自の「会員戦略」が中国人の「バーゲン愛」に火を付けたと分析しています。

   コストコは、オープニング特別企画として会員料金を大幅値下げ。米国の会員料金と比べて約3割安の「中国特別価格」が、中国人のハートをつかんだようです。

   また、牛乳や牛肉といった食料品のバーゲン価格が、中国人消費者を「狂わせた」と分析。大量の商品を破格で購入するという「コストコ戦略」が、もともと「バーゲン好き」の中国人に「はまった」のだそうです。

   さらに、「会員制という仕組みが中産階級の優越感をくすぐった」とか、「貿易戦争の影響で米国製品が値上げされるなか、コストコ価格が魅力的だった」といった状況も、コストコフィーバーの背景にあるようです。

   それでは、「今週のニュースな英語」は「cult」(信仰、礼賛)を取り上げます。日本語でイメージする「カルト」よりも、幅広い使い方をするようです。

the tea cult(茶道)
the cult of jogging(ジョギング熱)
cult word(流行語)

   下記の例文にもあるように、動詞build(築く)と合わせて「カルトを築く、熱狂的な信者をつくる」といった言いまわしも覚えておきましょう。

build a cult brand
(カルトブランドを築く)

   米中貿易戦争の影響で世界経済のかげりが指摘されるなか、上海のコストコフィーバーは明るい話題でしょうか。店頭でのインタビューで、「貿易戦争? そんなの関係ないよ!」と語っていた買い物客の姿に、中国消費者の強さを見せつけられた気がしました。(井津川倫子)

kaisha_20170303104637.png
井津川倫子(いつかわりんこ)
津田塾大学卒。日本企業に勤める現役サラリーウーマン。TOEIC(R)L&Rの最高スコア975点。海外駐在員として赴任したロンドンでは、イギリス式の英語学習法を体験。モットーは、「いくつになっても英語は上達できる」。英国BBC放送などの海外メディアから「使える英語」を拾うのが得意。教科書では学べないリアルな英語のおもしろさを伝えている。
姉妹サイト