「仕事時間ありきの価値観が骨の髄まで染み込んでいる」
J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「育休明けは『戦友』じゃない?」論争の意見を求めた。
――今回の投稿に対する反応を読み、率直にどんな感想を持ちましたか?
川上敬太郎さん「年功序列に代表される、仕事時間ありきの価値観が、日本社会の骨の髄まで染み込んでいることを象徴する投稿と反応だと感じました。時短かフルタイムかは、仕事にかけられる時間量の差でしかありません。フルタイムだから仕事能力が高く成果も出せる。時短だから仕事能力が低く成果も出せない―― そんな思い込みによって職場の風土が醸成されている現状があるのではないかと感じます」
――確かに「時短」=「働く時間が少ない」=「お荷物」という先入観が、ほとんどの回答者にみられますね。しかし、その先入観は投稿者本人にもあって、「もはやステージが違う」「戦友にはなれない」という屈折した思いになっているのではないでしょうか。
川上さん「投稿者さんが抱えているジレンマは、決して屈折したものではないと思います。むしろ、時短=ステージダウンとみなす職場風土に対して、率直な疑問を投げかけたものではないでしょうか。職場風土や染みついた価値観に対して、疑問すら抱かない人が多い中で、むしろ投稿者さんはご自身なりの価値観を失わずに持ち続けているように感じます」
――投稿者に批判的な意見の多くは、「時短は、通常勤務の人より仕事が出来ないのだから仕方がない」「人に迷惑をかけているから戦友とは言えない」などです。こうした意見は間違った先入観というわけですね。
川上さん「なかには、時短であることが原因で、仕事の成果を出せなかったり、周囲に迷惑をかけてしまったりする人もいるのだろうと思います。しかし、時短でも高い成果を出したり、周囲に影響が出ないようにうまく調整したりしている人もいます。これらの違いには、時短で働く個人の力量の問題と、会社の業務体制・仕組みづくりの問題の両方があると考えます。
たとえば会社にかかってきた電話に出るという仕事は、その時に会社にいないと対応できません。時短の人がいない時間帯に同僚の電話応対数が増え、それが負担になっているようなケースは、時短で働く人がどれだけ力量を磨いてもカバーしきれない面があります。一部の社員に負荷がかかり過ぎないよう会社側が業務体制を整理し、どうしても負荷がかかってしまう場合はその分をきちんと評価するなどの仕組みづくりなどが必要です」
――電話の応対の問題は、時短の人が取引先に時短であることを伝えれば、ある程度解決できますね。会社側が業務体制を工夫することで、時短の人をカバーする同僚の負担を減らせることができるというわけですね。
川上さん「そのとおりです。一方、仕事のために子どもをあきらめる、というのは別次元の話です。これまでの職場の常識からすれば、仕事と出産を天秤にかける考え方が通じたのかもしれません。しかし問いたいのは、そんな社会を本当に望みますか? ということです。仕事も出産も、どちらも充実させることはできます。本当はそんな社会が良いと思っているのに、無理だと考えている人が多いということです。例えば、当社の『スマートキャリア』というキャリアを活かす転職サービスを通じて、時短でもハイスキル・ハイキャリアを要する仕事に就き、かつ子育てと両立させ、どちらも充実させている人がたくさんいます」