政府が進める「働き方改革」とは別に、独自に働き方を見直したり、手直ししたりする企業は少なくない。
健康食メニューの食堂やレシピ本でも知られる計測機器メーカー、タニタもその一つだ。同社の谷田千里社長は、改革というならこの際、会社と働く人との関係性そのものを見直すべきと決意。先頭に立って「真の働き方改革」をけん引しており、その内容は、社員が「個人事業主」として独立することを支援。タニタの仕事を、フリーランスの一部として業務委託でやってもらおうというのだ。
「タニタの働き方革命」(谷田千里+株式会社タニタ編著)日本経済新聞出版社
社員の「個人事業主」化支援
本書「タニタの働き方革命」は、タニタが2017年に新しい働き方として導入した制度について谷田社長が、その背景や経緯、内容のほか、今後の可能性までを含めて解説したもの。労使間の大前提である終身雇用が崩れてきており、就活生の7割が将来の転職を視野に入れているという情報に接し、企業が旧態依然ではいられず、改革に着手したのは「働き方」ではなく「雇用」をめぐってのことだ。
終身雇用のエンディング、転職の一般化のなか、「そんな時代に、会社が全社員に、終身雇用を前提とした研修をやり続けるのは意味がないし、コスト的にも耐えられないでしょう」と谷田社長。そして、時代に合わせて会社、社員ともにウィンウィンの関係になれると社長が考えたのが、社員の個人事業主化だ。
谷田社長は、働き方改革が残業時間の削減で成し遂げられるような風潮に違和感をもち、経営者の立場から、将来を見据えて、抜本的な構造改革に思いを巡らせていたという。
そこに、あることをきっかけに、美容師の業界では美容師がアシスタントなどの研修時期を終えてスタイリストになる段階で個人事業主として独立し美容室と業務委託を結ぶ―という形態を知る。これだ! とひらめいた谷田社長は、このことに詳しい税理士を訪ねて指導を願い出た。