鉛筆なめなめの給与では人材難は当たり前
資格制度、役職制度が決まったらもう一つ、給与決めにおいて最も重要なこととも言える、個々人の給与の上げ下げに関する基準決めが必要になります。それが人事評価制度です。
噛み砕いていうと、業務に関わるどのような事象を対象として、それらがどういった基準で上下評価されるのかを決め、それを全社員に向けて提示するのが人事評価制度です。
たとえば、個人業績を人事評価の指標とする場合、目標100%達成以上がA評価、85~99%達成をB評価、60~85%達成をC評価、59%以下をD評価と定めて、A評価者は給与ランクアップ対象、B評価は他の評価項目との総合判断で給与ランクアップ検討対象、C評価は原則現状維持、D評価は給与ランクダウン対象とする、などの評価基準を社員に開示し給与が増えるにはどのようにがんばったらよいかということを、具体的にわかるようにするのです。
数字では表しにくいような業績以外の評価項目の場合は、どのようなことをどのぐらいすればA評価やB評価になるのかを、わかりやすく言葉で明示する必要があります。
これらをまとめると、給与に不満が出ているからと言って給与制度だけを作ってもダメ。それとセットになる資格制度、役職制度を整え、それらを極力納得性高く運用するために評価制度を明確化しなければ、結局、意味を成さないことがわかるはずです。
世間のあらゆる企業の待遇情報が簡単に手に入る今の時代、社員のモチベーションを上げる給与制度のキーワードは「納得性」です。社長が鉛筆をなめて社員の給与を決めていたのでは、今の採用難の時代を中小企業は乗り切ることができないということはしっかり肝に銘じるべきでしょう。
T社長、K社長には、それぞれ社会保険労務士の先生を紹介して、基本的な給与制度、資格制度、役職制度の構築を助言してもらい、並行してこちらで評価制度のあり方を各社長と相談することにしました。
令和の話時代に入って、中小企業は厳しさが増していると実感させられます。(大関暁夫)