「政府に協力すれば監獄行き、拒否すれば目を付けられる」
一方、今回の朴槿恵前大統領の「国政ろう断」事件の判決をめぐっては、経済界から「青瓦台(大統領府)の要求に知らないふりができない韓国企業の現実を無視した判決だ」とする不満の声が上がっている。
朝鮮日報(8月30日付)「政府事業を支援すれば監獄行き、拒否すれば目を付けられて...」がこう伝える。
「韓国大法院が29日、国政介入事件の上告審でこれまで論議を呼んでいた李副会長による『暗黙の請託』を認定した点を巡り、財界からは『政策への協力』と『政権癒着』を区別する明確な基準がない状況で、政権の要求に受け身で応じた企業が刑事責任まで負うことになりかねないとの声が漏れた」
これは、李副会長側が「大統領の強要によって、友人の娘に馬をあげただけで(受動的な賄賂)、それにともなう特典や利益は得ていない」と主張していることを指す。
しかし、大法院は馬3頭を「積極的な賄賂」とみなし、「それに伴う特典や利益もあった」と見たわけだ。
「財界幹部は『現・文在寅(ムン・ジェイン)政権が対北朝鮮事業を支援するよう要求し、それを聞き入れれば、暗黙の請託となり、賄賂となり得る。今後は政府の要請する事業に協力することが難しくなる』と話した。5大グループの役員は『暗黙の請託で企業人をまとめ上げるならば、政府の政策に協力した全ての大企業トップが刑務所の塀の上を歩くことになりかねない』としたうえで、『企業にとっては政府の政策に協力することへの不確実性リスクが一層高まった』と述べた」
韓国の政財界では、企業の政府への協力は政権幹部個人への資金提供といったズブズブの関係になるケースが少なくない。今回の裁判でも、李副会長が馬3頭を提供した朴前大統領の友人の娘は、アジア大会の乗馬競技で金メダルをとったアスリート。娘の「乗馬英才教育センターの練習用の馬」が名目だ。「練習馬」にしては、1頭1億円はかなり高いが、朴前大統領の「スポーツ政策への協力要請」に応えたというのがサムスン側の立場。だから、「政策への協力」を「賄賂」と見なされてはたまったものではないというわけだ。
「ある大企業役員は『今でも青瓦台(大統領府)が大企業トップを一度に呼び集め、投資と雇用を迫り、陰に陽に政府事業への支援要請が続いている。企業が政府の要請を受け入れれば犯罪者になりかねず、拒否すれば政権に目を付けられ、不利益を受けるという苦しい状況になった』と語った」
そして、財界関係者は「米中貿易戦争が激化し、日本とも経済戦争がピークに達している状況で、韓国を代表する企業であるサムスンが足首をつかまれた格好だ」と嘆いたという。また、経営者団体である韓国経営者総協会は8月29日、「経営界は今回の判決でサムスングループの経営不確実性が高まることを懸念しており、残念な思いだ」との声明まで出した。