企業の組織風土改革についてコンサルティングサービスを提供しているスコラ・コンサルト(東京都品川区)と、広告会社としてクライアント企業のコミュニケーション施策開発などで実績を誇るADKマーケティング・ソリューションズ(ADK MS、東京都港区)が共同でスタートした新事業が注目されている。
両社とも企業を顧客にコンサルティングを行っているが、請け負う内容はそれぞれ「内部のこと」と「対外的なこと」と対照的。新事業は、両方を合わせて包括的に取り組むブランディングサービスで、時代に合わせた企業変革をサポートする新しい試みだ。
スコラ・コンサルトとADK MS
新サービスは「DASEIN BRANDING(ダーザインブランディング)」と名付けられた。「DASEIN」は「存在」を意味するドイツ語で哲学用語としても用いられるが、新手法のブランディングにより「存在意義」を示す、あるいは「高めることがかなう」という。そのときどきの製品やサービスのための「ブランド」のアピールではなく「会社の存在意義」を確立できるようなブランディングを目指す思いを託したものだ。
企業のブランディングというと、ロゴやスローガンなどブランドの「形」を作り上げることが大まかな内容で、その目的は他との差異化により競争で優位を目指すことだ。ADK MSは長年、ブランドの「形」作りに従事し高い評価を得てきた。
ADK MSは持株会社ADKホールディングスの主要子会社の一つ。ADKホールディングスは、旭通信社と第一企画が合併(1999年)して発足したアサツー・ディー・ケー(ADK)が2019年1月に持ち株会社になり商号変更した。
一方、スコラ・コンサルトは1986年の創業以来、企業の風土や体質を改革する事業に従事。時代が進んで発生した陳腐化や、機能不全化の改善や手当など、組織を創造的な体質に変革することで企業価値を高めるサポートをしてきた。これまで1000社以上で組織改革を成功させた実績を持つ。
このように、ADK MSは対外的なブランディングのエキスパート。スコラ・コンサルトは内側からの改革のパイオニアであり、専門フィールドはほとんど重なるところはない。
その両社が2019年8月29日に都内で行ったダーザインブランディングについての説明会によると、新サービスは「企業のアウターブランディングとインナーブランディングを統合、表裏のないブランディングサービス」という。
つまり、両社で力を合わせ、あるいは補い合い、組織の内と外から、また、裏も表も、両社が培ってきた経験、技術を動員して包括的に、また立体的に、ブランディングを徹底に仕上げようというサービスだ。
説明会には、スコラ・コンサルトの辰巳和正代表のほか、ADK MSのプランニング・ディレクターでダーザインブランディングのプロジェクトリーダーを務める古村徹也さんらが出席。企業の発注を受けて「形」を作って納品する従来のブランディングサービスとは違う、クライアント企業の社員らも加えて一緒につくるブランディングを目指すことで、両社の思いが一致したことなどが示された。
「アウター」と「インナー」を統合
「ダーザインブランディング」のプロジェクトリーダー、ADK MSの古村さんによると、このサービスは大阪の在宅医療専門クリニックをクライアントに、すでに実際の取り組みが始まっている。
このクリニックは2015年、がんの在宅医療に特化して開院。「最期は自宅で迎えたい」という末期患者のニーズに応えたもの。終末期ケアは、急な容態変化の可能性が高く、患者のもとに赴く看護師の役割が非常に重要。ところが医療の世界では医師が絶対的な地位を占めており、看護師の間では意見を控えたほうがよいという認識が優勢で、そうした中ではこのクリニックにも、院長が開院で目指した方向とは関係なく、従来の認識を持つ看護師が集まってしまう可能性があった。
古村さんらはまず内に向けて「看護師を主体としたフラットなチームによる在宅緩和ケア」というコンセプトを明確化。それをベースにウェブサイトをつくって対外的アピールに努めたものだが、この際、一般的にはクリニックのウェブサイトでは院長の「ごあいさつ」がフロントページに置かれるところを「看護師主体」を印象づけるため、主役を看護師に据えた。
これらが取り組みのすべてではないが、患者ファーストの立場からのチャレンジは医療業界には少なからず波紋を呼び、ケアを求める患者が増えたという。「ダーザインブランディング」の説明会が行われるのと前後して8月末に、関西ローカルのニュース番組で同クリニックのことが取り上げられた。
スコラ・コンサルトの辰巳代表によると「ダーザインブランディング」の今後5年間の取り扱い目標を「年間100社」と設定。1件について「1000万円~2000万円程度」の売り上げを見込んでいる。