韓国の大法院(最高裁)は2019年8月29日、朴槿恵(パク・クネ)前大統領への贈収賄事件にからみ、二審で懲役2年6か月、執行猶予4年の判決を受けたサムスングループ経営トップの李在鎔(イ・ジェヨン)サムスン電子副会長(51)の二審判決を破棄し、審理を高裁に差し戻すよう命じた。
大法院の判断では、李副会長の贈賄額が二審より大幅に増えており、実刑判決が出る可能性が高いと韓国メディアは一斉に報じている。
日韓経済戦争が激化の一途をたどるなか、李副会長が収監されたら、サムスンはどうなるのか、韓国と日本の経済はどうなるのだろうか。韓国紙から読み解くと――。
高校1年からグループ企業視察の帝王教育
李副会長はサムスングループ創業者の孫で、父親の李健煕(イ・ゴンヒ)会長に名門・景福高校1年の時からみっちり帝王学を受けてきた。
夏休みなどの長期休暇ごとにグループ傘下の企業や工場を訪問、沿革から生産システム、労務管理にいたるまで徹底したブリーフィングを受けた。高校生が、1回数時間にも及ぶ説明を受けるのは並大抵のことではないが、嫌がるそぶりを見せず、じっと聞いていたという。時には役員会に出ることもあったといわれる。
ソウル大学東洋史学科を卒業後、慶應義塾大学大学院経営管理研究科に留学、ハーバード・ビジネススクール博士課程を修了している。英語に加え、日本語も堪能だ。日本の取引先からは「御曹司らしく、人当たりが柔らかで礼儀正しい」という評価を得ており、日本の人脈も分厚い。
2001年サムスン電子に入社後、10年で経営企画チームの常務補となり、グループの経営に参画、2012年に副会長となり、ナンバー2になった。しかし、李健煕会長が2014年に心筋梗塞で倒れて寝たきりになって以来、事実上のトップとしてグループを指揮してきた。
2017年に朴槿恵前大統領への贈賄事件の一審で有罪になった時は、約7か月拘置されている。日本の企業では考えられないことだが、重大な経営判断を下す時は、グループの役員が常に拘置所を訪れ、李副会長の指示を仰いだといわれる。