日本の「働く意識」は、周辺の国や地域と比べて自己研鑽への意欲も成長意識も、国際的に低いとの調査結果が報告された。
人材事業を手がけるパーソルグループのシンクタンク、パーソル総合研究所が日本を含むアジア太平洋地域の14の国と地域を対象にした「就業実態・成長意識調査」を、2019年8月27日に公表。同研究所は「日本だけ『一人負け』といってよい」と厳しい見方を示す。
また、「日本型雇用が直面している『機能不全』と切り離すことは極めて難しい」と分析している。
日本は「休みやすさ」を仕事選びで重視する
パーソル総合研究所の報告レポートによると、「上昇志向に関する日本の特徴」について、日本の上昇志向は14の国・地域のうち、最も弱いことがわかった。管理職志向・出世意欲は最低で、断トツで自己研鑽していない。
起業・独立志向も非常に低い。日本は唯一「休みやすさ」を仕事選びで「重要視している」と、警報にも似たトーンだ。
非管理職の人たちに「現在の会社で管理職になりたいと感じるか」と聞いたところ、日本の「YES」の割合は21.4%で、最下位(14位)。インド、ベトナム、フィリピンで86.2~82.6%、タイ、インドネシア、中国は76.5~74.2%など、他はいずれも高く、日本のすぐ上、13位のニュージーランドでも41.2%だから、ブッチ切りの最下位なのだ。ここ数年は毎年、4月の「新年度新入社員調査」で「出世欲」の低下が指摘されているが、今回の調査結果もその延長線上にあるようだ。
断トツの低さ
調査で、「断トツでしていない」とされたのが、「自己研鑽」。質問は「自分の成長を目的として行っている勤務先以外での学習や自己啓発活動について」回答を求め、選択肢(複数選択可)として「読書」「研修・セミナー」「語学学習」「通信教育」など具体的9項目と「その他」「とくに何も行っていない」の計11項目が並ぶ。日本の回答で最も多かったのは「とくに何も行っていない」で、その割合は46.3%で、これが「断トツ」だった。
この項目で2番目に高いのはニュージーランドだが、その割合は22.1%。東南アジア諸国のほとんどはひとケタの割合で、フィリピン、インドネシア、マレーシアでは50%以上が「研修・セミナー」で自己研鑽を図っていると答えている。ちなみに、日本の「研修・セミナー」の割合は13.6%だった。
「通信教育」「副業・兼業」「大学・大学院・専門学校」などの自己研鑽項目で日本はひとケタの割合の一方、他の国や地域では相当の割合の人が実行していることを示している。
日本型雇用が機能不全「憂慮すべき」
日本は「起業・独立志向」でも最低。「会社を辞めて独立・起業したいか」と聞いたところ、「とてもそう思う」(4.8%)「ややそう思う」(10.7%)を合わせて15.5%だったが、シンガポールを除く東南アジア、インドや中国では「起業・独立志向」は4割を超える。
韓国、台湾、香港などでも3割に近い人たちが「起業・独立志向」を示した。
今回の調査の結果について、パーソル総合研究所の取締役副社長兼シンクタンク本部長の櫻井功さんは、グローバル化のなかで日本型雇用が機能不全になっている可能性を指摘。「国際競争力の低下という観点から極めて憂慮すべきもの」とコメント。「このままいけば日本の産業のさらなる地盤沈下は避けられず、改革を進めなければならない」と述べている。
なお、調査は2019年2月6日~3月8日までに、調査モニターを対象にインターネット定量調査として実施。その国・地域に3年以上在住し就業している20~69歳の男女が対象。各国・地域とも1000サンプルを性別、年齢別に均等割付した。
調査対象は。日本の3地域(東京、大阪、愛知)と、中国3地域(北京、上海、広州)、香港、韓国(ソウル)、台湾(台北)、タイ(バンコク)、フィリピン(マニラ)、インドネシア(ジャカルタ)、マレーシア(クアラルンプール)、シンガポール、ベトナム(ハノイ、ホーチミン)、インド(デリー、ムンバイ)、オーストラリア(シドニー、メルボルン)、ニュージーランドの14の国と地域。
日本の3都市については、19年2月にインターネットを使って実施した「働く1万人の就業・成長定点調査2019」から、条件に合う1000サンプルを抽出した。