米中両政府は2019年8月23日、相手の追加関税に対する報復措置をそれぞれ発表。対立のステージが上がってきました。
まず中国国務院が米国市場のオープン前に、9月と12月の2回に分けて5078品目、750億ドル(約8兆円)分の米国製品に5%か10%の追加関税をかけると発表しました。先日、米国が発動した対中制裁関税「第4弾」への報復措置であり、特に米農家が嫌がる大豆の関税率を現行の25%から30%に上げてきました。
9月の米利下げは「既定路線」だけど......
中国の措置にトランプ米大統領は怒り、即座に「我々に中国は必要ない」とツィート。米通商代表部(USTR)は第1~3弾の税率を25%から30%、第4弾の税率を当初予定の10%から15%に、それぞれ引き上げると米国市場取引の終了後に発表しました。
8月1日、トランプ米大統領は影響が大き過ぎるため、「切れないはず」と見られていた対中制裁関税第4弾を発動して市場関係者を驚かせましたが、今回の措置で米中対立のステージは一段上がったといえます。
なぜなら、(1)税率はこれまで25%が上限と見られていましたが、そこを超えてきました。今後、どこまで上がるのか見通せなくなってきています。そして、(2)トランプ米大統領は米国企業に中国から出るように大統領令まで出してきましたが(罰則規定はなし)、通常では考えられないことであり、常軌を逸しているといえます。
今度は中国側の報復が気になりますが、関税面でできることはやりつくした感があります。おそらく戦いの場を別の場所、金融市場などに求めることになるでしょう。米中の対立は、軍事力を除いた全面戦争の状況を呈することになります。
先日、「北戴河会議」が終わりましたが、中国・習近平氏の強気の対米姿勢を支持する方向で終わったと聞こえてきます。
多くの関係者が、この勝負は米国の楽勝とか、中国は戦略を間違えているとか言いますが、そんな単純に結論の出せる問題ではないでしょう。なにより、中国側はすでに長期戦を覚悟しています。
こうした状況で金融市場が安定するとは思えません。9月のFOMC(米連邦公開市場委員会)では0.5%利下げが「既定路線」になってくると思われますが、金利を下げても安定するものではないでしょう。