私は14年間、銀行の営業として働いていた。
個人の資産運用相談担当という名の投資商品販売員。私がいた銀行では個人営業担当はほとんどが女性。入行して2、3年目になると事務担当から営業担当に。営業成績がいい人は本部から表彰してもらえる。
辞めた今ではそんな表彰に固執する意味なんてないと思うけれど、小さな銀行内での自分の地位は会社からの評価がすべて。一見「ゆるふわ」でも、成績に固執する女性は結構いた。今回は私が見てきた銀行内の闘いを、話したい。
お金持ちのオジサマをその気にさせる「ゆるふわ」女子
私が勤務していた支店はわりと大きい店舗。女性の営業職員は私を含めて3名。年齢は私が一番上で、杏奈(30歳)と梨花(24歳、いずれも仮名)。杏奈は見た目が「ゆるふわ」で、かわいい小動物系。会話の語尾に♡(ハートマーク)がついているような子だった。
杏奈は若い頃から営業成績は抜群。お金持ちのオジサマをその気にさせるのが上手だった。新しい商品が出たら、すぐに電話でアポイント。かわいい子のためなら時間を作ってくれるオジサマの多いこと......。商品の説明は販売研修で教わったとおりに説明。最後のひと押しは、「お願いします?」のひと言。これで契約締結。こんな調子で何件も契約を取ってくるからビックリ! 世の中、かわいい子は本当に得だ。
杏奈は金融・経済の知識がほとんどなかった。銀行なのである程度の情報は入ってくるが、自分なりに勉強する必要がある。しかし、杏奈はNIKKEIも読まず、「先輩すごいですよね~。そんなの読まなくたって商品を売ることはできますよ♡」と言っていた。
そんな調子で杏奈は10年。営業成績がいいから本部からの評判も良好。杏奈の自信はどんどん大きくなる。「自分はデキる」と思っているからか、後輩の梨花への対応もどんどん厳しくなっていった。
自分に甘く人には厳しい「ゆとり」女子
梨花はゆとり世代ど真ん中。こちらはいかにも気が強そうな見た目。2年目で経験がないにもかかわらず、とにかく自信に満ち溢れている。発言だけは一人前なのだ。
自分にはめちゃくちゃ甘いが、人を見る目は厳しい。梨花は早々に杏奈を「男性に媚びを売って営業してるだけ。大したことない」と、判断したようだった。
とにかく、杏奈に対して敵対心をむき出しにしているのがよくわかった。ふだんから杏奈には絶対に話しかけない。営業経験も少なく、先輩にフォローしてもらわなければならないことはたくさんあるのに、杏奈にはまったく頼ろうとしなかった。
それどころか、杏奈に対して営業成績を張り合うようになっていった。
ある時、杏奈が休みのときに杏奈のお客様が来店。担当したのは梨花。そして契約に至った。私の常識ではこの場合、成績は折半。もともと杏奈のお客様なので、日頃の杏奈の活動もあって契約がとれたと判断する。ところが、梨花は当たり前のように自分の成績に!
「それはおかしい」と言ってはみたが、「私が契約したんですよ」と当然のように言い返されてしまう。とにかく次の日、杏奈が出勤してきたら話し合うようにと伝えた。
次の日、杏奈が出勤し、言い合いが始まった。ゆるふわ小動物系の杏奈が、梨花に対していつもより低く、ドスの効いた声で言った。
「何で自分だけの成績にしたん? 私のお客さんやで。」
と、かなり怒っている様子。もちろん語尾に♡なんてない。
梨花「何で成績を半分にしないといけないんですか? 私が営業して、契約できたんですよ。」
杏奈「は? もともと私が頑張って営業していたお客さんやで。最後に契約したからって全部自分の成績にするなんて非常識やわ!」
梨花「わかりました。じゃあ、半分でいいです。」
杏奈「じゃあって何なん?」
......
こんな女性行員から投資商品は買っちゃダメ!
この出来事があって、二人の仲はさらに険悪になった。
今まで以上に口はきかない。あいだに立たされた私の居心地の悪いこと。どっちもどっちだと思う。でも、上司は杏奈の肩をもつ。そういえば、上司もいい年のオジサンだ! 結局、カワイイ子はこんなところでも得をしてるのか......。
その後、杏奈は「ゆるふわ営業」が認められて本部へ栄転。本部はいったい何を評価したのか、疑問でしかない。梨花は気の強さと自信たっぷりのゴリ押し営業で、どんどん成績を伸ばしていった。
そんな二人を見て、私は思った。「自分中心の営業で成績が上がり、本部はその数字だけを見て評価する。こんな銀行にはもういたくない」と。
銀行ではたくさんの商品を販売しているが、それぞれの商品で入ってくる手数料が違う。私が営業していた時代は、その販売手数料をどれだけ獲得できたかが、営業成績として評価される仕組みだった。
だから、自分の成績を上げたいのであれば、手数料が高い商品ばかり販売すればいいのだ。販売手数料が一番高い商品は保険。変額年金保険や外貨建て終身保険だと6%程度の手数料収入がある。投資信託は販売手数料が開示されているので、誰でも知ることができる。
高いもので3%。低いものはゼロの商品もある。国債や円建て保険だと0.5%程度。
何を販売するかによって、これだけ販売手数料が違ってくる。自分の成績だけを考えている営業担当は手数料の高い保険商品ばかり販売するのだ。
杏奈も梨花も、二人とも外貨建て保険が大好きだった。「つみたてNISA」のように販売手数料がゼロの商品には見向きもしなかった。こんな営業がいるから、銀行で投資商品を買うなと言われてしまうのだ。
もちろん、ちゃんとお客様のためにと思っている営業も多くいる。銀行で投資商品を買うことがダメなのではなく、自分の営業成績しか考えていない人から買うことがダメなのだ!
だから、銀行で相談する前に、少し投資の勉強をしておく必要があるのだと思う。投資の知識があれば、本当に自分のためを思って提案してくれているかどうかを判断することができるかもしれない。(ひろこ)
お金のことってなかなか人に相談できないよね。
みんな、お金のことってどう考えてるの? 投資って、難しいでしょ?
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