ベトナムを出るとき、「気をつけて」といわれたひと言
4人が日本で働きはじめて1年。ニッセーデリカの子会社のニッセープロダクツがベトナムで開校している日本語学校の卒業生になる。ベトナムにいたときは、みんな学生だった。
―― ベトナムで暮らしていたときは、どのようなことが心配だったのだろう。
チェンさんとフェンさんは「地震」と、すぐに返した。「ハノイは地震ないものね。外国人実習生でも、福島は就労希望者が少ないんです。その(東日本大震災と福島第一原発事故)影響は、他国にものすごく広まっています。残念ながら福島の環境は本当につらいという印象を持つベトナムの方は多い」と、門脇さんはこぼす。
震災から8年が過ぎて、日本では関心が薄れてきた。それが遠く離れた海外、ベトナムで未だにその影響が大きく残っているというのは、意外にも思える。門脇さんは、「報道そのものは海外のほうが強烈でしたからね。あの印象はなかなか拭えないのかもしれません」と言う。
安藤さんも、「当時、わたしは名古屋事業所にいたのですが、ブラジル人の方などは地震報道を見て、その1週間後くらいには『怖いから帰ります』と辞めていった人もいました。それが各営業所で少なからずいましたから。海外の方からすれば、そのくらいの衝撃だったんです」と、振り返る。
日本では、どこに住んでも地震は身近な存在だ。実際に、4人が来日してからも揺れることはあった。
チェンさんは、「地震、ありました。寝るときとか。突然なので、驚きました」と話す。
フェンさんも、「でも、小さいから大丈夫です。初めてのときは怖かったけど......」と、苦笑する。
安藤さんによると、東日本大震災の影響で「日本は地震が頻繁にあって、怖い」という印象は根強いという。「面接の時も『地震、多いですか』と聞かれますし、そこは『多いです』ときちんとお答えします。ただ、地震に対する備えも万全を期していることを伝えています」と、不安を取り除いている。