外国人労働者を大切にしないと......
「戦後の高度成長期、地方から集団就職で『金の卵』と言われていた学生さんと、まったく同じですね。日本人が昔、東京などに出稼ぎに来ていた。それを今、外国人労働者に頼っているんです。日本人がやらなくなった仕事をまかなってくれているということですね」
そう門脇さんは話す。
4月の法改正で「特定技能」の枠組みができて、新たに外国人労働者を受け入れやすい制度がはじまった。安藤さんは、
「ようやく、この段階まで来たかというのが本音です。ただ、この制度は基本的にはメリットしかないと思っています」
と、受けとめている。
「日本で働いている外国人労働者は約126万人。労働者全体の1.8%しかいないんですね。だいたい、日本だけですよ。『言葉を覚えてから来なさい』などと強要する国は。鎖国のようです。在留資格が出にくいなど、日本特有の事情があってそのようになっていますが、そう考えると(新しい制度は)ほんとに歴史的な一歩です。 食品業界は、わずか3万4000人の枠しかありませんが、これが実質的な開国と受けとめています。日本がようやく、世界に向けて開かれた雇用環境をつくっていくという意思表示を示したのですから」
と、門脇さんも前向きだ。
少子高齢化の影響で人手不足が続くなか、人材の確保については、現状深刻な懸念事項もある。それは技能実習や特定技能に限った事ではなく高度人材を含む外国人労働者の争奪戦が、欧米、中国などを筆頭に世界規模ですでに始まっていることだ。優秀な人材の囲い込みは諸外国も当然に進めており、日本国内のみの問題ではない。
「そこで日本が低賃金で彼らを使おうなんていうことをやってしまったら、永住権の付与などを始めとするさまざまな施策で人材の流入を促す諸外国に敵うわけありません。多くの優秀な外国人材が日本で働きたいと希望する環境を創造することを念頭に、日本全体の経済の発展のために活躍してもらうべく、たとえば大都市圏への集中を防ぐ、悪質なブローカーを排除することなどは、国が当然のこととして、やっていただきたい」
と、注文を付ける。
門脇さんは、こう続ける。
「その一方で、外国人材の流失を防ぐのは、法律だけでは完遂できないのではないかと思います。ふだんの仕事でも、生活でも、受け入れる企業がどれだけ彼らを大切にするかにかかってきるはずです」