3年前から毎年、ベトナムから20人程度の外国人技能実習生を受け入れている、食品製造の株式会社ニッセーデリカの福島工場を訪ねた。
外国人技能実習生の実態と、2019年4月にスタートした外国人労働者の受け入れ拡大について、採用する企業側の声を、ニッセープロダクツ取締役・常務執行役員で事業開発部長の門脇崇史さんとニッセーデリカ総務部・総務人事課主任の安藤雅幸さんに聞いた。
「長期に安心」して雇用できる
外国人技能実習生は、年間に受け入れられる枠が原則として企業が雇用する常用雇用労働者の5%を上限に決まっている。ニッセーデリカの場合、5工場で約1000人が働いているので、年間およそ50人の技能実習生を受け入れ、各工場に振り分けている。
「1年目に全体で50人を受け入れ。2年目にまた50人を受け入れ、3年間で150人が実習を行うことになります。そこから3年間の技能実習期間を終えた実習生が帰国していき、また新しく1年目の実習生を受け入れるといった仕組みです。福島工場では、1年間に15~20人程度の受け入れをしています。」
門脇崇史さんは、そう説明する。
技能実習の制度は、本人が一度しか利用できないため、一たん帰国した実習生が、再び日本に戻って来るケースは少なかったという。しかし今年4月、外国人労働者の受け入れ拡大に伴う「特定技能」という新たな在留資格の創設が行われ、技能実習を「修了」した実習生に再来日の道が開かれた。通算5年間の在留資格が得られ、日本での労働ができるようになったのだ。
もう一つの変更点は、技能実習生の滞日期間。技能実習生は、技能実習1号で1年目、2号で2年目、3年目を日本で過ごす。これまでは最大3年間だったが、先に認められた技能実習3号の認定を受けることができれば4年目、5年目も延長して日本で実習を続けることができるようになった。
門脇さんは、
「技能実習は、文字どおり技能を習得するためにでき上がった法律に基づき運用されていますので、本来は人手不足のための制度ではありません。とはいえ、労働力の確保に関しては現実にはその枠組みを使っても人が足りない。先程の特定技能の制度と併用できるようになったことで、かなり人の確保にプラスになる。 実習生の受け入れにあたり、コスト的には渡航費や、監理組合といわれる協同組合への監理費を月々支払わないといけないんですが、そういうものをすべて含めても、派遣会社にスタッフを依頼するよりも少し安い場合もあります。」
と話す。
技能実習の制度はその趣旨から、原則3年間実習生を固定できるので、すぐに辞められてしまうリスクがほとんど生じない。つまり、上限5%の枠内で必要な人材を受け入れすることにより、募集にかかる諸々のコストも抑えられるというわけだ。
「技能実習生が仕事に慣れてくれば、生産効率が上がりますから、重宝している会社が多いのが事実ですね。満足している会社が大半だと思いますよ」
門脇さんはそう説明する一方で、
「問題があるとすれば、事務的な手間が非常にかかること。それを含めても、とても有意義に活用しています」
という。
ベトナム人技能実習生は欠かせない「人財」
この工場は、正社員や派遣社員も含め、さまざまな「労働力」が食品製造の仕事を支えている。そんな中に交じって働いているベトナム人技能実習生を、日本人従業員はどのように受け入れているのだろう――。
門脇さんは、
「やりやすいとかやりづらいとか言う問題ではなく、とにかく人財を確保したい。彼らがいないと「工場が回らなくなる」と言うと少し大げさな言い方になりますが、とにかく共存共栄していくしかないという心構えですね」
「当社では従来、時給を高く設定できなかったため、労働力の確保には苦心しました。昔から外国人労働者を活用せざるを得ない環境にありましたね。採用し始めた頃は、多様な働き方の外国人従業員との間で多くの問題が発生しました。でも、そのひとつひとつにお互いにしっかりと向き合い対処してきたことで得られたものが当社の財産だと思います。たとえば、考え方。この国の人はこんな考え方するんだという気づきが会社内に蓄積されていき、少しずつ円滑に回り始めていきました」
と、前向きに受けとめている。
ニッセーデリカ福島工場で受け入れている技能実習生は、現在はベトナム人のみ。ちなみに日本国内でみても、ベトナムの技能実習生が一番多く、次いで中国となっている。
「これから外国人労働者を受け入れる会社は、いたずらに国を増やさないことが得策じゃないかと。工場なのでマニュアルとか指示書とか、何か国語にもなってしまうと手間ですし、あとは考え方も一つのほうがいい。通訳をつけるにしても、ミャンマーから来ました、ネパールから来ました、となればキリがない話になります。無理して国を増やさないよう、やられるほうがいいのではないでしょうか」
と門脇さん。
労働力不足の緩和にむけての外国人受け入れ拡大については今後も国内外の情勢や法律の変化に適時的確に対応し、互いに理解、協力を深め融合することが求められる。