ジャパンSDGsアワードの「価値」は下がったか
政府が吉本興業に目を付けたのか、吉本興業が売り込んだのかはわかりませんが、SDGsの取り組みを多くの人に周知することが急務であったと考えれば、手っ取り早くSDGsの認知度を上げるため、吉本興業を通じてメディアに頼るしかなかったのだろうとの推察はできます。
また、株主であるテレビ局や広告代理店が吉本興業に広報事業として仕事を回したのではないか、と勘繰りたくもなります。
しかも、SDGsアワードの表彰も、じつは「既定路線」で国と吉本興業がいかにもSDGsに取り組んでいるかを見せるための、単発的パフォーマンスに巨額な公的資金が流れたとも考えられ、SDGsアワードの価値も下がったと思わざるを得ません。
今回の吉本興業だけではなく、CSRの概念が気薄な企業がSDGsを掲げるだけでは、逆に企業イメージの悪化につながる可能性は大いにあります。吉本興業は、非上場であるがゆえにCSRの基本であるガバナンスを軽視していたことが、SDGsの取り組みをただのパフォーマンスに終わらせてしまった最大の要因と考えます。加えて、SDGsが掲げる達成目標に対しても、何の定量化もなされていないこともあります。
今回の吉本興業の闇営業、反社会勢力との関わりについて、J-CAST会社ウォッチ編集部がSDGsアワードの所轄である外務省に問い合わせたところ、「SDGsアワードは、2017年当時の受賞団体の活動に対する評価を協議して決めたもので、それ以上でも、それ以下のものでもありません」と、担当者が答えたそうです。
つまり、評価は未来の事情が影響するものでもなく、今後を保証するものでもないということです。それは、今後はその時の状況で評価・判断していくことを意味しています。「SDGs(持続可能な開発目標)」の活動なのに、です。
吉本興業は「第1回SDGsアワード特別賞」を国に返上する気はないのでしょうか。政府は「返せ!」とは言わないのでしょうか。これも安倍首相への忖度なのでしょうか。これではSDGsにマジメに取り組んでいる企業・団体に、あまりに失礼ではないかと思うのですが、いかがでしょう。(清水一守)
プロフィール
清水一守(しみず・かずもり)
SDGs研究推進有限責任事業組合 代表理事
愛知商工連盟協同組合 国際事業部参与、英国CMIサスティナビリティ(CSR)プラクティショナー資格/相続診断士
日本大学文理学部を卒業。大学では体育を専攻。卒業後、家業である食品販売店を継ぐも新聞販売店に経営転換。地域のまちづくりとして中山道赤坂宿のブランド化を推進した。
その後CSR(企業の社会的責任)の重要性を学び、2018年7月から名城大学で「東海SDGsプラットフォーム」として月2回の勉強会を開催中。SDGsを広めるための認定資格講習を7月より開始 。現在、一般社団法人SDGs大学(商標登録出願中)を準備中。岐阜県出身、59歳。