米国株上がりまくりで「わが世の春がきた」 怖がるな! 上場株式投資に国境はない!(小田切尚登)

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   「わが世の春がきた」というのは、こういうことをいうのだろう。2019年7月26日は、世界の投資家にとって記念すべき日となった。

   米国株式市場を代表する株式指数であるS&P500とナスダックの二つが揃って、この日に史上最高値を記録したのだ。リーマン・ショックが起きた2009年からの10年間、米国の株価が上がりまくった結果である。

  • 「米国投資」はスゴかった!(写真は、米ニューヨーク証券取引所)
    「米国投資」はスゴかった!(写真は、米ニューヨーク証券取引所)
  • 「米国投資」はスゴかった!(写真は、米ニューヨーク証券取引所)

米国株を持っていた人は全員儲かっていた!

S&P 500  7月26日に3,027.98ドル 史上最高値!
(10年前は972.26ドルだった。3.11倍に増えた。)
ナスダック 7月26日に8,339.64ドル 史上最高値!
(10年前は1,965.96ドルだった。4.24倍に増えた。)

   S&P500は、米国の大手上場企業500社の株価をバスケットにして指数化したもの。この500社で米国上場企業の株式時価総額の約8割を占める。米国大手企業の株価の推移を最もよく示す指標である。

   一方のNASDAQはハイテク企業が多い取引所の指数。新興企業の割合が高いのが特徴で、将来を占う指標と言ってもいいだろう。

   「史上最高値」ということは、買ったのが30年前であったとしても、きのうであったとしても、その時に株式を持っていた人は、全員儲かっていたということだ。どれだけ儲かったかは、いつ買ったかによるが、もしも12年前に買ったとすると、以下のようになっている。

過去12年間の株価の上昇率(配当などを含むトータル・リターンの数字。ドルベース)
米国: +153%
中国: +17%
フランス: +14%
日本: +14%
ドイツ: +12%
ブラジル: +1%
英国 +1%
スペイン:▲19%
ロシア: ▲29%
イタリア: ▲39%
(チャーリー・ビレロのデータによる、2019年8月6日現在)

   結果は明らかである。米国株の一人勝ちということだ。12年前に米国株を1万ドル買った人は、平均で2万5300ドルに増えた。

   日本株は少しだけ増えて1万1400ドルになったが、逆にイタリア株であれば6100ドルに大きく減っている。この期間に世界で最も成長したのは中国経済であるが、中国株は日本株より少しいい1万1700ドルにしかなっておらず、米国株にまったくかなわない。

時価総額、米国5社で東証3668社の4分の3に匹敵

   これには、いろんな理由が考えられるが、結局は米国経済が順調で、企業業績がいいということに尽きる。米国株の強さを象徴しているのが、アルファベット(グーグルの親会社)、アップル、アマゾン、フェイスブック、マイクロソフトの5社である。この5社の株価も昨今の米中貿易戦争の影響を受けて弱含みであるが、それでも7月末時点で5社の時価総額(=株価×株数)の合計は4.33兆ドル(455兆円)と巨大である。

   東京証券取引所に上場する3668社の時価総額の合計が612兆円であるのに対し、たったの5社でその約4分の3に匹敵するわけだ。

   株式を買うときは、誰しも株価が「上がりそう」と思う企業の株を買うはずである。上がりそうな企業というのは、将来に利益をたくさん生み出すであろう企業のことである。

   そう考えると、投資すべき企業はどうしても米国が中心になってしまうのはやむを得ない。日本で創業から10年程度で急激に成長して、時価総額が数兆円の世界的大企業になった、という例は残念ながら一つもない。またヨーロッパも事情に大差はない。どちらも経済が停滞しているのだ。

   上場株式への投資に国境はなく、われわれは国籍と無関係に最もよいと思う企業に投資をするしかない。しかし、なぜか投資について「愛国心」を発揮している人がいる。自分は外国は怖いので、これからもカネは日本国内に置いておきます、と。そういう人はご自由にどうぞ(笑)。

   でも、金利のほとんどつかない定期預金などに預けていても、ほとんど増えないし、日本株も低迷しているので、念のため。

金融知識で個人財産に大きな「差」がつく時代

   日本だけに投資するもう一つの問題点は、リスクが日本に集中してしまうということだ。日本で住んで日本で働いている人が、余ったカネをすべて国内に貯蓄・投資していたとしたら、その人は日本が沈没したら一巻の終わりということになる。

   日本経済は世界と比べたらマイナーな存在であり、そこにすべてを賭けるのは危険すぎる。為替リスクが怖いという人がいるが、円の価値が下がった時のことを考えて、外貨に投資して為替リスクの分散をするのである。

   ちなみに、過去数年間は米国の株式以外を見ても、債券も上がったし、金をはじめとする貴金属の多くも大きく上がった。代表的な投資商品のほとんどが上昇したと言える状況であった。投資家はほぼ全員儲かったはずだ。

   それでも儲からなかったという人は、よほど運が悪いか、または、低迷する日本の重厚長大企業の株式に集中的に投資でもしていたか、のどちらかであろう。

   それでは今後どうなっていくのか――。世界情勢は常に混とんとしており、相場を正確に予測することは不可能である。そのため、我々がなけなしの資金を運用する時は、まず何よりもリスクを抑えることが大事だ。

   株式投資としては、米国株が引き続き投資対象の中心的存在になるだろうが、一方で今のレベルまで株価が上がってしまうと、下落リスクも大きいと想定しないとならない。そのため、株式に加えて債券や不動産などの様々な商品を含めて分散投資を検討していくことが今まで以上に必要となる。

   また、投資に関する手数料をできるだけ減らすことも、利回りを改善するために重要だ。金融についてどれだけ勉強したかどうかで、個人の財産に大きな差がつく時代になった。(小田切尚登)

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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