組織が「ブラック」に突っ走るリスクは時代を問わず 「日本軍」に学ぶ経営マネジメントのヒント(大関暁夫)

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ガダルカナル、インパール作戦にみる「大失敗」

   たとえば、ガダルカナル作戦でいえば、その失敗要因は(1)米軍との比較上情報戦で圧倒的に負けていたこと(2)日本軍は小出しな兵力の投入で最終的には米軍以上の兵力を投入しながら連戦連敗を繰り返したこと(3)海軍と陸軍の共同作戦であったにも関わらず意思の疎通がなく、その効果がまったく見出せなかったこと―― が挙げられています。

   これらの敗因分析を企業戦略の場面に当てはめるなら、以下のとおりとなります。

(1) 市場情報を事前調査することなく新たなマーケットに進出し、マーケットを熟知したライバル企業に完敗を繰り返すこと
(2) 社運を賭けた新規事業でありながら、様子見の小出し投資の繰り返しで大きな効果を見出せず、結果的に累積で大きな損失を生み事業撤退を余儀なくされること
(3) 社内の技術部門と営業部門のコミュニケーション不足により事業連携が悪く、お互いがそれぞれの立場での主張を譲らず顧客優先姿勢が崩れている間に競合先にビジネスを奪われてしまうこと

に相当するでしょう。

   一方、3万人もの戦死者を出し日本軍の敗戦の中でも凄惨を極めたといわれるインパール作戦の敗因は、(1)そもそも現場の実情を把握してない大本営が作戦の可否を決めかね、あいまいな態度を続けたことで、それまでにかけた高いコストの目をつぶれず、作戦実行に関して一見合理性があるかの如く思え作戦を決行してしまったこと(2)作戦強行を主張する現場指揮官と大本営作戦参謀が懇意で、作戦決行決定には私情が入り込んで客観性を欠いていたこと(3)さらに、これはガダルカナル作戦にも当てはまる重大な敗因としてもあげられそうですが、万が一作戦が思惑どおりにいかなかった時の戦略オプションであるコンテンジェンシー・プランの用意がなかったということ――が挙げられています。

   インパール作戦の敗因もまた、それぞれを企業戦略の場面に置き換えるならば、

(1) 過去の事業投資コストに目をつぶることができず、赤字事業に糞切りがつかずに傷口を広げることになってしまうこと。
(2) 経営者が事業展開などの重大決断において、進言者・発案者への個人的温情を斟酌してその可否を判断し正否判断の精度が鈍ること。
(3) 戦略検討時に欠けていたコンテンジェンシー・プランの策定は、今や大企業においては戦略策定の常識になっている戦略遂行上不可欠な大切な要素であるということ

と言えるでしょう。

   このように、日本軍の第二次世界大戦において失敗を繰り返した主要作戦の敗因からは、企業マネジメントの立場から学ぶことは山盛りなのです。終戦記念日を含むお盆休みの期間に、戦争という過ちを二度と繰り返してはならないという決意を新たにしつつ、敗戦からマネジメントのヒントを学ぶ機会としてみてはいかがでしょうか。

   ちなみに、私はこのお盆期間に、「満鉄全史」(加藤聖文著、講談社学術文庫)と「なぜ日本陸海軍は共に戦えなかったのか」(藤井非三四著、光人社NF文庫)を、新たに読みすすめているところです。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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