毎年、夏の暑い盛りが近づいてくると、反戦の意を込めた第二次世界大戦に関するテレビ番組などが組まれるようになります。
私は毎年この時期は、そのようなテレビ番組を録画して観たり、同時にそれに誘われるように大戦に関する組織運営マネジメントの書籍を読んだりするのが常となっています。
今年(2019年)は加えて、戦艦大和の建造を題材にしたフィクション映画「アルキメデスの大戦」が、8月15日を前に公開されました。
経営者が「大戦の戦略的失敗」から学ぶことは自然な流れ
映画「アルキメデスの大戦」ですが、私は原作の存在(三田紀房氏による漫画です)も知らぬままに鑑賞しましたが、第二次大戦に向かう日本が万が一、不毛な戦争にますますのめり込むような事態に陥った時に、国家や国民を戦争に突き進む気持ちから目覚めさせるために「戦艦大和」が作られたのだという歴史パラドクス的な主張が込められた作品でした。
これに、企業経営におけるブラック経営に突っ走るリスクからの回避ヒントを垣間見たように思えました。
このような軍国主義時代の失敗マネジメントに言及する映画が作られるようになった背景には、戦後70年超の年月を数える中で、近年、国内外のさまざまな戦時機密資料が公開されるに至ったことがあります。
個々の戦時戦略失敗の根本理由や日本陸海軍の組織運営上の過ちを学術的に分析し、組織マネジメントへの応用を示唆するような書籍が多く出版されるようになってきたという流れがあります。
そもそも「戦略」という言葉は、今はごく当たり前のように企業マネジメントで使われているものの、これは戦争の攻略手段の策定に由来しているものです。経営者が大戦における日本の戦略的失敗から何かを学ぶということは、ごく自然な流れでもあると言えるのです。
そのような書籍の代表作としては、「失敗の本質~日本軍の組織論的研究」(戸部良一著ほか、中公文庫)や「組織は合理的に失敗する」(菊澤軒宗著、日経ビジネス文庫)などが挙げられます。
どちらも日本軍が壊滅的な打撃を受けた太平洋戦線のガダルカナル作戦やインド、ビルマ戦線におけるインパール作戦など、大戦そのものの雌雄を決定づけた主力戦の敗因を、マネジメント的観点や組織論的観点から分析した名著です。