日本の標的サムスンはダメージを受けていない?
ところで、日本政府の輸出規制強化策は、韓国の主要産業である半導体メーカーに痛撃を与えることが狙いだったが、ここへきて、その効果を疑問視する報道が韓国紙から出始めている。
特に、最大の標的だったサムスンがあまりダメージを負っていないようなのだ。
中央日報(8月12日付)「ベルギーで素材を確保したが...『サムスンの本当の危機は新事業模索の中断』」は、こう伝えている。
「サムスン電子のイ・ジェヨン副会長が現場経営に入り、サムスン電子は日本の輸出規制の影響から安定を取り戻す雰囲気だ。しかしサムスン内部では『根本的危機』に対する不安感が高まっている。イ副会長は最近相次いだ社長団会議で、グローバルIT業界の構図変化の中で、未来の投資について懸念を強く表した。日本の輸出統制への対応策も重要だが、新しい成長動力の発掘と投資で遅れを取るかもしれないという危機感が強い」
「日本発の半導体・ディスプレー素材輸出規制はひとまず対応したという評価だ。サムスン電子はベルギーなどから6~10か月分の在庫を確保し、日本の規制拡大基調の中でもひとまず安堵した。問題はサムスン電子の未来の事業だ」
日本の輸出規制はベルギーなどからの供給でしのぐ体制ができたという。これでは、日本の半導体部品メーカーは、サムスンから見捨てられて踏んだり蹴ったりの状況だ。では、サムスンの「根本危機」とは何か。
「イ副会長は主に新しい成長動力を確保することに注力してきた。次世代人工知能(AI)サービス、第6世代(6G)移動通信、ブロックチェーンなど新事業の発掘と投資の大部分が海外企業との競争と協力を基盤とするためだ。大型M&A(企業の合併・買収)、大規模投資などは企業トップ間のトップ-ダウンで意思決定を必要とする。しかし、こうした未来成長動力の発掘は当面の懸案で後回しになっている」
「業界関係者は、『過去にはコントロールタワー(サムスン未来戦略室)が国内の懸案を担当したが、(解体したため)今はもうイ副会長が自ら国内の懸案と海外の日程のすべてに対応しなければいけない状況』とし、『日本の輸出規制が目の前の障害物なら、サムスン電子の成長動力発掘にブレーキがかかったのは目に見えない本当の危機』と話した」
つまり、日本の輸出規制対策のために、サムスンの司令塔であるイ副会長が自ら奔走しなければならず、サムスンにとってもっと重要な新規事業や大規模投資などの遅れをとってしまったというのだ。それがサムスンの「本当の危機」だったが、目の前の「障害物」である日本の輸出規制問題が片付いたので、イ副会長は本来の仕事に戻れるというのだ。
なんだか、サムスンに軽くあしらわれているような気もするが......。
(福田和郎)