3000人の技術者を募集、1兆円の研究費を投じる台湾企業
そんな日韓の膠着状態に漁夫の利を狙う国がある。朝鮮日報(8月5日付)「韓日対立、中台企業に利益」は中国と台湾企業の動きをこう伝える。
「中国が韓日の対立激化のすき間に食い込み始めた。中国ディスプレー最大手の京東方科技集団は8月4日、アップルにiPhone用有機発光ダイオード(OLED)パネルの納品を目指すことを明らかにした。これまでOLEDパネルは全量をサムスンディスプレーが供給してきた。しかし、韓日対立でOLEDパネルの正常な生産ができなくなりかねず、アップルが京東方科技集団を調達先に加える可能性が高まった格好だ」
「中国の半導体メーカーも急な動きを見せている。福建晋華集成電路は最近、サムスン電子とSKハイニックスで10年以上勤務歴があるエンジニアを採用するという募集を出した。世界最大の半導体受託生産メーカーである台湾の台湾積体電路製造は7月26日、半導体設備、工程エンジニア、研究開発人材を年内に約3000人規模で採用することを明らかにした。会社設立以来最大規模の新規採用だ。また、年内に110億ドル(約1兆1700億円)を投資し、超微細製造プロセスの開発に取り組む予定だ」
それもこれも、日韓経済戦争で疲弊する両国の半導体関連企業に取って代わろうとする動きだという。半導体関連ばかりではない。
「電気自動車(EV)用バッテリー・素材産業でも、中国が韓日対立で利益を得るとの見方がある。EV用バッテリーで世界最大手の寧徳時代新能源科技はライバルの(韓日)企業とさらに差をつける可能性が高い。既にドイツのBMW、フォルクスワーゲンなどに納品し、技術力と量産能力を認められ、ドイツに世界最大のEV用バッテリー工場を建設した。半導体とは異なり、バッテリーは事実上格差がない状況だ。(韓日のように)素材の需給に問題が生じれば、自動車メーカーは中国のバッテリーメーカーと取引を行う」
そして、韓国の半導体企業で日本メーカー外しの動きはもう始まっている。
「中国ではフッ化水素を専門とする凱聖フッ化学、浜化集団などが注目を浴びている。日本製のフッ化水素に代わる有力候補に数えられ、すでにサムスン電子、SKハイニックスなどは韓国国内のメーカーだけでなく中国企業の素材のテストも進めている。日本の経済誌・日経アジアンレビューは「韓国と日本が『ルーズルーズ』(編集部注:ウィンウィンの逆で双方が損をする)の貿易戦争を繰り広げている」とし、「両国経済界にまったく望まない結果をもたらすことになる」と指摘した。中国が唯一の勝者になるという意味だ」
(福田和郎)