「かんぽ生命」の保険販売でお客が損害を受けた問題で、日本郵政グループの日本郵政、日本郵便、かんぽ生命保険の3社の社長が2019年7月31日、東京都内で会見した。
冒頭、グループのトップである日本郵政の長門正貢社長が「ご迷惑、ご心配をおかけし、お客様に深くおわび申し上げます」と謝罪した後、3人の社長がいっせいに深々と、そして長々と頭を下げた。
お辞儀なんて45度も腰を曲げれば「最敬礼」の類
お辞儀の角度は90度の直角。頭を下げている時間は1秒、2秒......5秒、6秒...... ほぼ10秒に近かった。
3人の社長はそろって頭を下げている間、いったい何を考えているのだろうか? 僕はぼんやりとそんなことを考えながら、テレビで3人の頭のてっぺんを眺めていた。
翌8月1日にはセブン&アイ・ホールディングス(HD)がやはり東京都内で会見した。7月1日に始めたばかりのセブン-イレブンのスマホ決済「セブンペイ」で、不正アクセスが多発し、お客に損害を与えてしまった。このため、セブンペイを9月末で廃止することになり、その謝罪会見だった。
ここでも、まず「ご迷惑とご心配をおかけしたお客様におわび申し上げます」という発言の後、セブンHDの副社長ら4人が深々と頭を下げた。やはり90度で、その時間はかんぽ生命よりはやや短く、6秒か7秒だったが、長いことには変わりはなかった。
いつごろからだろうか、企業などの謝罪会見で「90度の長ったらしいお辞儀」をよく見かけるようになった。すっかり「定型化」しているみたいである。
そもそもお辞儀なんてものは、45度も腰を曲げれば「最敬礼」の類いだろう。それを1秒か、せいぜい2秒も続ければ、立派なものである。それなのに、90度で時には10秒近くも頭を下げ続けるなんて、どういうことなのか?
謝罪する側としては、そのほうが「本気」で謝っていると思ってもらえると考えているのだろう。でも、お辞儀の前のおわびの言葉を聞いていると、とてもそのようには思えない。