ソニーCSLなど出資のギリアと提携
トライは、AI教育サービスの開発で、AIなどにかかわるソフトウエアやシステム開発を行っているギリアと資本業務提携。同社は「ヒトとAIの共生環境の実現」をミッションに、ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)などが出資して17年6月に設立された。1業種1社に絞って提携を進め統合AIプラットホームの開発を行っている。
一方、1987年に創業し「個別教育のパイオニア」を標ぼうするトライ。これまで、のべ120万人への個人指導を通じて蓄積したノウハウと、幅広い生徒層の学習データがあり、これをまずサービス開発に活用。その後の構築にあたっては、トライグループが持つテストの回答データ2万2000人分を集めプロトタイプ的なモデルを仕上げた。
8月からの実証実験では、家庭教師事業、個別教室事業などを通じて、全国で約7万人の中高生に試してもらうことで精度を高める計画。トライでは「100%の精度は困難。誤差は、現場での指導で補いたい」としている。
AIが生徒の回答をもとに「共進化」
AIを使った教育サービスはすでに先行モデルがあるが、ギリアと提携して開発したトライのモデルがセールスポイントとする最大の特徴は、英・数・国・理・社の5教科対応であることと、独特の解析手法を用いたことで、どのレベルの学力の生徒にも応じられること。
トライグループの物部晃之常務の説明によれば、既存のAIサービスはだいたい、学力の高い生徒を対象に数学などの論理系科目で利用されており、提供メニューも対象も幅広く設定されたトライのサービスは、教育を主眼とする同社ならではのものという。
「診断型」AI教育サービス開発には個別指導の高度化のほか、社会のさまざまなところで課題とされる少子化への対応が背景にある。少子化により進学や補習のための企業間では生き残り競争が激しくなることが予想され、競争相手との差別化が急務。また塾業界では個別指導への需要が高まっており、人材確保、有効活用のため、指導プロセスの合理化が欠かせなくなっている。
トライとギリアによる「診断型」AI教育サービスは、これを利用する生徒たちのつまずき傾向をAI側では評価を出すだけではなく、AI自身も自動的にデータベースを更新。最適な状態を保つ仕組みになっているという。「共進化的アダプティブラーニング方式」と呼ばれる新しいアプローチで、全国で多数の生徒を指導するトライの企業規模があって可能になったという。