たった一人に翻弄されるトランプ相場の「異常」 「為替操作」の真犯人はオマエだ!(鷲尾香一)

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「利下げ圧力」のもう一つの理由

   米国大統領として再選を目指すトランプ大統領にとって、米国景気の悪化は最大の障害だ。しかし、「アメリカ人の仕事をアメリカに取り返し、強いアメリカを実現する」ことをアピールしてきたトランプ大統領にとって、貿易不均衡の改善が必要だ。中国と「貿易」で戦争しながら、米国景気を悪化させないためには、利下げによる景気の下支えが不可欠となる。

   さらに、トランプ大統領がFRBに利下げ圧力をかけ続けている理由には「ドル安誘導」という別の理由も存在する。ドル安は米国の貿易赤字縮小に寄与する。

   米国では財務省が年に2回、為替報告書を議会に提出する。この報告書は、米国の主要貿易相手国が、故意に為替操作して自国通貨安を誘導していないかを調査するもので、日本はその「監視対象国」として毎回、監視対象国に指定されている。

   しかし、他国に対して自国通貨安を誘導していると非難する米国は、トランプ大統領自らが利下げを利用した自国通貨安を目論んでいる。

   8月5日、人民元が1ドル=7人民元の節目を超え、人民元は過去最低水準となった。トランプ大統領は、すかさずツイッターで「これは『為替操作』だ」と吠え、米国財務省は同日、中国を為替操作国に認定した。

   前述のように、為替操作国の認定は通常、年に2回の為替報告書で行われる。それ以外で認定が行われるのは、極めて異例だ。米中は「貿易戦争」に加え、「通貨戦争」も突入した。

   果たして、「トランプ・リスク」はいつまで市場を混乱させるのだろか――。

(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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