「食」の分野で日中均質化?
もともと、おいしいものに目がないのが中国人ですが、最近では単に「おいしさ」にとどまることなく、「食べ物が人のカラダや気持ち、ひいては生活や人生にどう影響するか」をもっと意識しようという論調が、メディアなどで目立つようになってきました。
「食育」を専門科目として導入する中学校や小学校も、上海ではすでに現れてきています。いずれも経済成長がもたらしたゆとりの結果と言えます。
日本政府が「食育基本法」を制定したのは2005年ですから、「食育」普及は日本が先輩格ですね。その目指すところは、仕事に追われて時間がないからといって一回の食事をおろそかにすることなく、カラダや心が喜ぶような食べ物を自分自身が選ぶことができるようにすることと、私は理解しています。
「仕事を持つ女性たちの健康をサポートする」というコピーで「フルグラ」が発売されたのはもう20年近く前の1991年で、その売り上げに弾みがついたのはこの6~7年のことだといいます。
ブレイクの背景に「食育」の浸透が関係しているのかどうか、私には何とも言えませんが、今回の販売促進のテコ入れをきっかけに、中国でもフルグラの売り上げがこれから順調に伸びていくなら、それは「食」をめぐる価値観や好みが日中間であっという間に似通ってきている、いわば均質化してきた表れと言ってよいでしょう。
その意味でも私は今後の動きに大いに注目しています。
プロフィール
陳言(ちん・げん)
1960年北京生まれ。南京大学卒業。中国・経済日報社に入社後89年から2003年まで日本滞在。慶応義塾大学経済学研究科博士課程修了。慶応義塾大、萩国際大学(山口)で日本経済論などを講義。10年、北京で「日本企業(中国)研究院」を設立し、執行院長に。「環球網」「南方週末」など中国有力メディアや日本メディアに多数寄稿。19年1月、月刊「人民中国」副総編集長に。