研修業をしている私は、この時期は秋から始まる新入社員フォローアップ研修の準備を始める時期でもあります。
春に入社した社員さんから、事前に職場での様子をヒアリングするのですが、どの企業の社員さんからも必ずあがるのが「挨拶をしても返してくれない人がいる」ことです。
新入社員研修では「大きな声で挨拶しましょう」と指導しますので、張り切って挨拶をするのですが、職場の上司や先輩が挨拶を返してくれなかったり、冷やかしたりすると次第に彼らは挨拶の声が小さくなったり、挨拶そのものをしなくなるのです。
挨拶は相手の存在を認めること
挨拶は相手の存在を認めることでもあります。
「挨拶をしない(返さない)=私はあなたを認識していません」
と言っているようなものですから、挨拶したほうは不快な気持ちになるのは当然です。
自分を不快にさせる相手とは、仕事といえども距離を置きたくなります。特に直属の上司や先輩など実務を共にする関係性の場合、「報・連・相」を怠り、ミスにつながることも多々あります。
また、このような状態が継続的に続くとストレスから体調不良を引き起こすこともあり、休職や退職に至るケースを、私もいくつか見てきました。
「挨拶しない」「無視する」が集団になるとさらに事態は深刻で、もはや「イジメ」と言っていいでしょう。
最近は、社内で無料通信アプリ(LINE)のグループを利用して情報共有することも多いようです。自分だけグループに入れてもらえず、必要な情報を得ることができなかった。そして、それを理由に陰口や嫌味を言われる。
このような悩みを抱えている社員さんが、結構いるのです。
「パワハラ」は暴言や人格否定だけではない
仲間外れにした当事者たちの言い分は、
「なんかあの人いつもテンション高いし」
「うちの雰囲気に合わないから」
「挨拶はできるけど、仕事がねぇ」
など、第三者からみれば、じつに些細な理由で仲間外れにしているのです。
仲間外れにすることで、仕事が円滑に進まなかったり、ミスが発生したりと業務に支障が出る場合は、パワーハラスメントの「人間関係の切り離し」に該当します。
パワハラというと、まずは暴言や人格否定を思い浮かべる方が多いと思いますが、今年(2019年)5月に連合が公表した「仕事の世界におけるハラスメントに関する実態調査2019」によれば、同僚からのハラスメントでは「隔離・仲間外し・無視などの人間関係からの切り離し」がトップです。
これは想像以上に深刻な問題なのです。
また、個人的な好き嫌いや仕事の進め方で見解の相違があったとしても、組織として成果を出すためにはコミュニケーションをとることは必要です。良好な人間関係を構築するために最初にすべきことは「挨拶」です。
挨拶は自分から積極的にする、そして挨拶をされたら相手に聞こえるようにしっかりと挨拶を返すことを、すべての社員が徹底して行うことで、明るい職場になることを改めて理解していただきたいと思います。(篠原あかね)