ぼさぼさのブロンドの髪は計算づくかも......
第2次世界大戦後の英国の歴代首相はアトリーからボリスまで15人だが、そのうちオックスフォード大学の卒業生は11人と圧倒している。
また中等学校についてはパブリック・スクールとよばれるエリート校卒の比率が高く、1721年の初代首相ウォルポールからボリスまでの55人の首相のうち、過半数がその卒業生だ。
なかでも、ボリスも学んだイートン校の卒業生が20人。逆に授業料がかからない、ふつうの公立中等学校を卒業したのは55人中たった9人しかいない。イギリスの庶民が「特権階級でないと偉くなれない」と感じても仕方がないところだ。
ちなみに、日本の首相の場合は、庶民宰相と呼ばれた中央工学校卒の田中角栄(1972~1974に首相)以降は学歴の意味は大きく減じられた。過去、四半世紀の間に東大卒の首相は鳩山由紀夫(工学部卒)しかいない。
一方で、ボリスといえば、平然と嘘をつく、行動が荒っぽく問題を次々に引き起こす、女性関係にだらしない...... といったさんざんな悪評が聞こえてくる。自信家で、品がなく、問題発言が多く、テレビで人気と知名度を得たことをバネにトップの座を得た...... と書いてくると、その姿は米国のトランプ大統領とダブる。
ただし、ボリスの野卑な行動の裏には相当程度の計算があるところがトランプ氏とはちょっと違う。彼のトレードマークは、ぼさぼさのブロンドの髪であるが、彼はカメラに映るときはいい塩梅にぼさぼさになっているか確認しているという。
さらに、彼は「バカができるインテリ」として笑いを取る術を心得ている。前任のメイ首相が冷たい秀才女性といった雰囲気を与えていたのとは対照的。演説は非常に上手で、内容よりもその話術で人を惹きつけてしまう。バカなことや間違いを言ったりして恥をかくことも多いが、それさえも魅力に変えてしまう。典型的な「味方にいると心強いが、敵に回したくない男」である。