信念なき政治家? EU離脱強硬派、英「ボリス」新首相はこんな人(小田切尚登)

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   2015年12月、古代ギリシャと古代ローマのどちらが優れているか、というディベートが、英ウエストミンスターのメソディスト・セントラルホールで2000人の聴衆を前に行われた。

   ローマを支持するのは古典学の泰斗でケンブリッジ大学教授のメアリー・ビアド。対するギリシャ擁護派は、当時ロンドン市長だったボリス・ジョンソン(愛称ボリス)である。

  • ボリス・ジョンソン新首相の登場で、英国はどうなるのか!?
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ボリス氏が「古代ギリシャ人こそ最高の存在」と主張するワケ

   ボリスは、民主主義がギリシャで生まれたことを強調する。かの地に国王や皇帝のような絶対的存在は存在せず、合議制により民主的に物事を決めていた。今日まで続くこのシステムを初めて作り上げた彼らこそ最高の存在だ、ということだ。

   たとえば、アリストファネスのリューシストラテーに、女たちが反戦のためのセックス・ストライキを行った、という有名な話があるが「そういう主張が可能だったのは民主主義の世の中だったから」という議論を展開する。

   それに対して、ビアドからは「ギリシャは民主制のアテネだけではない。軍事国家スパルタもギリシャだったこともお忘れなく」といった反論が出た。

   また、ボリスが詩も哲学も演劇も歴史学もギリシャが優位にあると述べたのに対して、ビアドはこう述べた。

「ある有力な政治家が自著にこう書いているのです。ウェルギリウス(共和政ローマを代表する詩人)のアエネーイス第4巻でディードーが自殺するところがあらゆる書物のなかで最高だ」

   ボリスは苦笑いして、「それを書いたのは自分だ」と認めた。

   結局、このディベートはビアドの勝利となった。勝敗はともかくとして、我々にとって特に興味深いのは、ボリスのローマ帝国に対する反駁が、現代のEU(欧州連合)に対する批判と重ねて論じられているところだ。

   「古代ギリシャから引き継いだ自由の火を消すな。ブリュッセル(EU本部)の独裁に対抗できるのは英国だけだ」といった主張だ。

小田切 尚登(おだぎり・なおと)
小田切 尚登(おだぎり・なおと)
経済アナリスト
東京大学法学部卒業。バンク・オブ・アメリカ、BNPパリバなど大手外資系金融機関4社で勤務した後に独立。現在、明治大学大学院兼任講師(担当は金融論とコミュニケーション)。ハーン銀行(モンゴル)独立取締役。経済誌に定期的に寄稿するほか、CNBCやBloombergTVなどの海外メディアへの出演も多数。音楽スペースのシンフォニー・サロン(門前仲町)を主宰し、ピアニストとしても活躍する。1957年生まれ。
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