「ママはなんで働かないの?」中1の娘に言われて大ショックの専業主婦 専門家に聞いた

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   「ママはなんで働かないの?」。わが子のためによかれと思って専業主婦を続ける女性が、中学1年の娘からこう聞かれて大ショック! こんな投稿が女性向けサイトで話題になっている。

「専業主婦は時代遅れ。娘さんのためにも働く姿を見せないと」
「母親に対するリスペクトのない生意気な娘だ」

などと賛否両論だ。専門家に聞いた。

  • 専業主婦がいけなかったの?
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「よそのお母さんはお金があっても働いているよ」

   話題のきっかけになったのは、相談サイト「ヤフー知恵袋」(7月2日付)に載った次の投稿だ。

「50歳専業主婦です。中1の娘から『ママはなんで働かないの?』と聞かれました。『お金に困ってないし、毎日家族を迎える幸せがあるから』と答えると、『友達のお家はお金に困っているように見えないけど、お母さんも働いている。迎えてくれるのはありがたいけど、頼んでいないし。専業主婦で本当にいいの?』と言われました」

そういうのだ。娘は、学校で職業体験の授業があり、疑問を持ったようだ。「先生が何と言ったかわかりませんが、娘にそう言わせた学校に腹が立って仕方ありません」と教師に怒りをぶつける。

「高校卒業後アパレルで働いた経験がありますが、夫のおかげで結婚後ずっと専業主婦に。働いている時よりはるかにストレスもなく、専業主婦ができること、家族を毎日迎えられることに幸せと誇りを感じています。ただ、気になるのは、娘から『私に勉強しろとか、大学に行けとか、〇〇になったらとか言うけど、自分では働いてもいないのに、なんで私にそういうの?』と言われ、落ち込んでいます。今さら働こうと思ってもPCは使えませんし、接客もおっくうです。専業主婦であることがそんなにいけなかったでしょうか?」

と結んでいる。

   この回答に対する「ヤフー知恵袋」のベストアンサーはこうだ。

「あなたの家庭こそ本来あるべき姿だと思います。かつての日本の家庭は、ほとんど父親が働いて母親は専業主婦、夫婦共働きの家庭のほうが少なかったはず。それは、旦那の給料だけで家計は支えられていたし、毎年昇給してボーナスも退職金も出て終身雇用、年金もちゃんと出る社会環境だったからです」
「ところが今は、旦那の給料は安いし、上がらないし、終身雇用は崩壊。夫婦共働きでなければ家計を支えられない家庭がほとんどになりました。あなたの家庭は旦那さんの稼ぎで充分に家計を支えていけるなら、何ら問題はありません。そういう恵まれた家庭に嫉妬した教師が娘さんに嫌味を言ったのでしょう。こんな事は盛大に教育委員会や学校に抗議して当然だと思いますよ」

と、学校に怒りの矛先を向けなさいとアドバイスする。

「娘には、母親がグウタラしているようにしか見えない」

   もっとも、「ガールズちゃんねる」など他の女性向けサイトでは、「教師に怒りをぶつけるのはお門違い。子供も手がかからなくなったんだから、働いたらどう?」という専業主婦に対する辛辣な意見が多かった。

「娘さんとは価値観が違うので、どうにもなりません。モヤモヤ感を払拭したければ外で働く以外ないでしょう。パートに出ましょう! PCが使えないなら勉強すればいいだけです」
「娘には、母親がただグウタラしているようにしか見えないのだろうね。自分が働きたくないことを、家のため、子どものためと、恩着せがましく言っても、母親が充実していないことを見透かされているんだよ」
「『お金に困ってないし、毎日家族を迎える幸せがあるから』。この返しはないなあ。理由が消極的すぎるわ。中学生の娘から見たら志が低く見える」

また、こんな意見もあった。

「私の母も専業主婦だったけど、昼間はスイミング行ったり、お菓子教室に行ったり、PTA活動をやったりしたから、『なんで働かないの?』という疑問は起きなかった。でも、結局は働くのに尻込みしていただけで、私が大学に入ってからパートを始めたら『パート楽しい! パート仲間と飲みに行くのも楽しい!』『もっと早く働いていればよかった!』と、大はしゃぎだったね」

「母親の家事の苦労もわからない娘は勘当すればいい」

   一方、「家事の仕事は大切なのに、母親の苦労がわからない娘だ。勘当すればいい」と、娘を批判し、専業主婦を擁護する意見も3割近くあった。

「お母さんが専業主婦でいられるのは、ある意味勝ち組なんだよ! お父さんに感謝しなさい!と、こういう生意気な娘には言ってやりたい。家事も手伝ったことのない娘だろうけど」
「私の母も専業主婦だった。私はキャリア志向で、実際かなりの高収入を得ているけど、母に対して『働けば?』と思ったことは一度もないな。逆に、家にいて私の面倒をみてくれて感謝している」

また、こんな意見もあった。

「娘は大きくなると、みんな同じことを言うよ。私は専業農家で冬場の数か月は暇だから、趣味をしたり、愛犬とゴロゴロ戯れていたりすると、娘から『お母さん暇そうだね。友達のお母さんは、夜勤で頑張っているよ』と言われる。『へえ~、大変だね』と言いながらもモヤモヤ。私だって農繁期は働いて、そこそこ収入があるんだけどね」

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、この「専業主婦論争」の意見を求めた。

「専業主婦も共働き女性も、どちらにも引け目がある」

   ――今回の投稿と回答者のそれぞれの反応を読み、率直にどのような感想を持ちましたか。

川上敬太郎さん「中1の娘さんと言えば、反抗期や思春期を迎える難しい年ごろです。そんな娘さんとのコミュニケーションのあり方の話と、専業主婦に対するイメージの話は、分けて考えた方がよいのではないかと感じました」

   ――なるほど。娘は娘、母親は母親というわけですね。ところで最近、ネット上でも専業主婦のことを「絶滅危惧種」と呼ぶ人さえいます。投稿者の心情の背景には「専業主婦」であることに対する後ろめたさというか、コンプレックスのようなものがあり、娘のひと言がグサリと刺さった印象がありますが。

川上さん「コンプレックスは、専業主婦の人も、共働き女性の人も、どちらにも持ってしまうことがあるようです。専業主婦の場合は、働いて収入を得ていないことに対する後ろめたさや罪悪感を覚えるケース、共働き女性の場合は、生活のために働かなければならない境遇を卑下してしまうケースなどです。一方で、それぞれの道を自ら望んで選択した人の場合は、まったくコンプレックスを感じていない傾向がみられます」
「しゅふJOB総研では、専業主婦の後ろめたさや罪悪感に関する調査を行ったことがあります。半数以上の人が何らかの引け目を感じていました。年代が高くなるにつれ、引け目が少なくなりますが、30代では7割、40代では6割と、若くなるほど引け目を感じる傾向が強くなります。現在は共働き世帯が多数派ですが、かつては専業主婦が多数派でしたから、異なる時代の価値観が混在している現状があります」

   ――どういう時に「うしろめたさ」を感じるのでしょうか。

川上さん「アンケートを見ると、こんな答えが多かったです。『子どもが小学校に上がった時、想像以上に共稼ぎの人が多く、親しくなった時に、夢の専業主婦だねと言われた。また、毎日何しているの?と詮索されることも嫌だった』とか、『子育てや家事、地域の活動など、それなりに忙しくしていたが、収入がないことに常に後ろめたさを感じていた。何かを買う時、子どものことであっても、必ず夫に聞かなくては悪いと思う』といった回答です」
「ただ、今回大切にしたいのは、投稿者が専業主婦であることに自信と誇りを持っている点です。そのことは尊重されるべきだと思います。社会で生きていくためには、収入を得るための『稼ぎ』が必要です。一方で、家庭を切り盛りしたり居住地域の中で協力し合ったりする『務め』も必要です。稼ぎと務めは、どちらも社会生活に欠かせないものです。家族の中で、稼ぎと務めをだれがどういうバランスで担うかは、家庭ごとに違ってよいはずです。投稿者が専業主婦として『務め』を専任で担い、それによって家庭が円満に回っているのであれば、他人にそのことを批判する権利はないはずです」
「投稿者が学校に対して疑問を持ったのは、専業主婦という役割の重要性を学校がきちんと伝えてくれていないのではないか、と感じたからかもしれません。あるいは、じつは心の奥底で専業主婦であることに後ろめたさを感じてしまっている裏返しの可能性もありますが......。今回の投稿を見る限りでは、どちらの可能性もあると感じます」

「生活には『稼ぎ』と『務め』の両方が必要だ」

   ――専業主婦を擁護する回答の中には、古典的な「女は家にいるもの」という考え方がみられます。このことに関してはどう思いますか。

川上さん「夫が働いて妻は専業主婦という図式は、高度成長期につくられたものです。それ以前は自営業が多く、夫婦共働きがむしろ当たり前でした。一方で、妻のことを『家内』と呼ぶように、家の中を切り盛りするのは古くから女性の役割だったというイメージもあると思います。それらは良い悪いではなく、その時代に合った一般的な役割分担があったということだと思います。これからは、夫が家事を切り盛りする『専業主夫』がもっと増えるでしょう。大切なのは、生活には『稼ぎ』と『務め』の両方が必要で、どちらも等しく重要であることです。『稼ぎ』を妻、『務め』を夫がやってもいいわけです。それぞれの役割を誰がどう担うかは、そのご家庭の自由だということです」

   ――なるほど、娘にとって、お母さんが「主婦」でなくて、お父さんが「主夫」であってもいいということですね。

川上さん「そのとおりです。娘さんはまだ『稼ぎ』と『務め』それぞれの必要性を把握し切れておらず、未熟なのだと思います。一方で、母親の姿を見ていて、専業主婦であることに対する自信や誇りを感じ取れないこともあるのかもしれません。投稿者が心から自信と誇りを持っているのなら、娘さんに、ご自身が専業主婦としてどんなことをしているのか、日々どんなことを考え、それをしないことで何が起きるのかを丁寧に伝えてみてはいかがでしょうか」
「時には一緒に家事をしたり、一部を娘さんに任せてみたりしてもいいかもしれません。稼ぎだけではなく務めも大切なのだと理解することは、娘さん自身の今後のキャリア形成を考える上でも、とても重要な学びになるのではないかと思います」

(福田和郎)

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