「脳は、人間が人間らしく生きるための根幹をなす『心』の基盤である。そのため、脳はいつの時代においても人間の科学的興味の大きな対象となってきた。脳科学は、認知、行動、記憶、思考、情動、意志など、人間の心の働きを生み出す脳の構造と機能を明らかにすることを通して、真に人間を理解するための科学的基盤を与えるものである」
文部科学省は、「脳科学研究の科学的意義」の中でも、こう記している。
では、「Deep Thinkと脳の働き」においては、どのような関係性があるのか――。今回は、脳神経科学者の青砥瑞人(あおと・みずと)さんに、脳神経科学の観点からDeep Thinkについて、聞いた。
-
青砥瑞人さんは「脳の働きを理解しながらDeep Thinkすることが大事」と話す
アイデアを「熟成」する時間が必要だった
―― Deep Thinkと脳の働きには、どのような関係があるのでしょうか?
青砥瑞人さん「『Deep Thinnk =深く考える』という行為は、脳の観点からいうといかに使っている神経回路のactivation濃度を高めるかということです。最近では、『創造性の神経科学』という分野が研究されはじめているのですが、脳が創造性を発揮することの条件としては、『深く使われた神経回路をどれだけ持っているか』が結びつきの発想と原理において重要と言われています。
では、どのようにすれば『深く使われた神経回路』を持てるようになるのでしょう。
それは『筋トレ』と同じように、何度もその神経回路を使っていく必要があります。筋トレは、筋肉に負荷をかけて、乳酸が溜まった状態を経て筋肉がついていきます。脳の神経回路もそれと同じで、『アイデアが煮詰まんない』『アイデアが出ていこない』、そんな『熟成期』を経て、神経細胞同士が結びつき、新たな発想に結びついていくんです。
このように脳の働きを理解しながらDeep Thinkすることが大事なのではないかと思います」