日本郵政株の追加売り出し、年内は困難か?
投資家への背信行為だけの問題ではない――。政府は保有する日本郵政株の追加売り出しを、今年4月に発表しており、5月には主幹事証券を決定。市場では「消費税率引き上げ前の9月にも売り出しが行われるのではないか」とみられていた。
しかし、今回のかんぽ生命の不正販売問題で市場では、「年内は難しいのではないか」との声が出始めている。
「日本郵政グループ」の株式の保有構造は複雑だ。簡単に説明すると、親会社である持ち株会社の日本郵政は、傘下に日本郵便、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式を保有している。郵政民営化法で、政府は保有する日本郵政の株式については、保有義務分である「3分の1超」以外は、できる限り早期に売却することが規定されている。
また、日本郵政が保有しているゆうちょ銀行、かんぽ生命の株式については、できるだけ早期に全株処分を売却することとされている。ただし、日本郵便の株式は100%を日本郵政が保有する義務がある。
2015年11 月に日本郵政、ゆうちょ銀行、かんぽ生命の3社の株式が同時に東京証券取引所に上場されたが、この時、政府は日本郵政株式を市中で売却。また、日本郵政はゆうちょ銀行とかんぽ生命の株式をそれぞれ市中で売却した。
日本郵政は、ゆうちょ銀行株とかんぽ生命株の売却益を政府が保有している日本郵政株の取得に使った。政府は日本郵政の売り出しと、日本郵政に対する日本郵政株の売却により、約1.4兆円の収入を得ている。
2017年9月に実施された政府保有の日本郵政株の第2次売却でも、政府は約1.4兆円の売却収入を得ており、2回の日本郵政株の売り出しに関連して、政府の手には総額約2.8兆円が入っている。