厚生労働省の「中央最低賃金審議会」(厚労相の諮問機関)の小委員会は2019年7月31日、19年度の最低賃金(時給)の引き上げについて最終協議を行い、地域別最低賃金の改定の目安を国平均で27円引き上げ、901円とすることを決めた。
最低賃金は900円台となったのは、時給で示されるようになった02年以降初めて。東京都と神奈川県では、1000円を超える。
審議会で最終協議、10月実施へ
政府は6月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)2019」で、最低賃金について過去3年間の年率である3%程度を超える期待を表明しており、協議の結果が注目されていた。
経営者側は、人件費の増加に直結する大幅引き上げに反対していたため、協議は決着がなかなかつかなかったという。
今回は、全国加重平均は今回で4年連続3%台となる3.1%の大幅な引上げとなった。
小委員会は地域の経済情勢など判断材料にして、各都道府県を、「A」を最高として「D」までの4段階にランク分けし引き上げの目安を決めた。
それによると、A(東京、神奈川、千葉、埼玉、愛知、大阪)は28円、B(茨城、栃木、長野、静岡、滋賀、京都、広島など1府10県)は27円、C(北海道、宮城、群馬、石川、岡山、香川、福岡など1道13県)とD(青森、秋田、福島、鳥取、高知、熊本、鹿児島、沖縄など16県)は、26円引き上げた。いずれも2018年度を上回った。
目安どおりに改定が実施されると、最高は東京(現在985円)の1013円、次いで神奈川(同983円)の1011円となり、初めて1000円を超える。最低は鹿児島県(同761円)の787円となる。
政府は当面のゴールとして最低賃金1000円を目指し、18年度まで3年連続で年3%の割合で引き上げを実施。当初は23年度に1000円実現を見越していたが、「骨太方針2019」で前倒しして達成する方針を示していた。
審議会は、引き上げ目安を厚労相に答申。目安を基に各都道府県の地方最低賃金審議会が新しい最低賃金を決め10月から適用される。
日本商工会・三村会頭は「懸念」表明
日本商工会議所の三村明夫会頭は7月31日、最低賃金の引き上げ額の目安が決まったことを受けコメントを発表。ホームページでもこれを公開した。
三村会頭は「『諸般の事情を総合的に勘案し』という必ずしも明確ではない根拠により、大幅な引上げが決定されたが、これにより今年度は約4割であった最低賃金引上げの直接的な影響を受ける企業が更に増加することや、中小企業の経営、地域経済に及ぼす影響を懸念する」と、憂慮を表明。一方で「わが国の賃金水準が他の先進国との比較で低い水準にとどまる理由の分析をはじめ、最低賃金の在り方について検討していく点についても、政府が着実に進めていくことを期待する」とした。