「月末金曜は、少し早めに仕事を終えて、ちょっと豊かな週末を楽しみませんか?」――経済産業省と経済団体連合会がそう呼びかけて2017年2月、「国民運動」として「プレミアムフライデー」なるものが始まった。個人消費を増やすのと、労働時間を減らすのが目的とのことだ。
でも、そんな金曜日を迎えられるのは、土曜、日曜も休みの大企業の社員や公務員だけだろう。土日が書き入れ時の飲食業や小売業の人たちには無縁だし、そもそも月末は決算などで忙しい。最初からそんな批判があった。
税金もそれなりに使ってきたはず......
ある調査を見ると、「プレミアムフライデー」の恩恵を受けたという人は1割かそこららしい。まあ、今のところ、成功した「国民運動」とはとても言えないのだが、経産省は依然、その盛り上げに熱心なようだ。
たとえば、毎月のプレミアムフライデーの1週間ほど前に「○月のプレミアムフライデー情報」なるものを発表し、前日にはご丁寧にも「○月のプレミアムフライデー直前情報」を流している。
7月の「情報」を見ると、各百貨店の「プレミアム サマーバザール」の日程表の後、夏休み時期に入ったというので「プレミアム サマーパーティー」を「月別推奨テーマ」にして、パーティー向きの会場をいくつか紹介している。
そして、いよいよプレミアムフライデー前日の「直前情報」になると、百貨店、ショッピングセンター、飲食店、ホテル・旅館など百数十の業者の「取組」状況が事細かに紹介されている。
こうした作業は広告代理店の博報堂がやっているそうだが、これら「情報」や「直前情報」の冒頭には「経済産業省」の名前がそのシンボルマークとともに麗々しく掲げられている。税金もそれなりに使ってきたはずだ。
プレ金、キャッシュレス決済で「お色直し」か?
僕はこういう催しそのものが「悪い」と言っているのではない。それどころか、僕が行きつけのビアホールのプレミアムフライデーは、ある銘柄の生ビールが昼の開店から夕方6時まで半額になる。暇人の僕はよく出入りしている。
だけど、経産省、つまり政府がこんなことを「国民運動」と銘打って行うのは、いささか押しつけがましいのではないだろうか。
世耕弘成経産相はプレミアムフライデー2周年の2019年2月、記者会見で「もう新たな予算を使ったりする施策ではない」と言ったそうだ。だが、ある施策がいったん始まると、途中で失敗とわかってもやめない。それが役人たちの悪い癖である。
現に、プレミアムフライデーは2年半になってもまだ続いている。加えて、最近の「情報」を読むと、経産省が推進している「キャッシュレス決済」と合体させようとしている。プレミアムフライデーの「お色直し」みたいである。
日本は「独裁国」ではないのだから、あれもこれも、本来は民間に任せておけばいいことなのに、政府がのさばり出て旗を振りたがる。そんな「国民運動」なんて、余計なお世話なのである。(岩城元)