自分勝手な判断は禁物
では、自分自身のトラブルで休日対応せざるを得なくなった場合は、どうなるのでしょう。
このケースも、「会社の指揮命令下」に置かれている時間かどうかによって判断されることになります。
具体的には、社員が起こした業務上のミスやトラブルについて、会社として休日に対応させる運用や黙示にそれを認めていた場合には、会社の指揮命令下に置かれている時間として、その対応時間も「労働時間」に該当する可能性があります。
一方、会社として休日にまで対応することは不要と明示していた場合には、仮に対応したとしても、使用者の指揮命令下に置かれている時間とはいえず、「労働時間」には該当しないということになってしまいます。
そのため、きちんとミスやトラブルを引き起こしてしまったことを上司に報告するなどして、許可や指示を得てから対応するようにしましょう。
さらに、取引先からの急用やトラブルで休日対応した場合です。もちろん、この場合でも、会社として休日に対応させる運用や黙示にそれを認めていた場合には、会社の指揮命令下に置かれている時間として、その対応時間は「労働時間」に該当します。
ところで、トラブルを起こしたのが取引先であった場合、その取引先に社員の休日出勤分の賃金を請求ができるのか? というと、法律上ではトラブルに対応した社員の賃金は、あくまで会社と社員との関係で発生するものなので、その賃金を取引先が支払うことはありません。
ただ、さすがに取引先のトラブルで対応したのですから、たとえば「休日特別対応費用等」の名目で、会社として別のかたちで請求するということはビジネスにおいて必要なことです。
「取引先との関係性もあるので、社員に対して今回の件は『労働時間』とはカウントしなくてもいいよね?」なんて、対応は絶対にあってはならない発言ですので、そのようなことを言われた場合は、忽然とした態度をとるようにしましょう。
◆北川雄士弁護士のひと言◆
緊急時や会社・取引先の状況などによっては、休日であっても対応しなければならないこともあるでしょう。会社側がさまざまな理由をつけて、「労働時間」ではないので払わないと言ってくるような場合は、言いなりになるようなことはせず、きちんとカウントしてもらうようにしましょう。
どうしても支払ってもらえない場合は、弁護士などの専門家に相談してみることをオススメします。
今週の当番弁護士 プロフィール
北川雄士(きたがわ・ゆうじ)
弁護士法人グラディアトル法律事務所所属弁護士
京都大学法学部卒業後、神戸大学法科大学院修了
「労働問題」「男女トラブル」「脅迫・恐喝被害」「ネットトラブル」などを得意分野として扱う。ライトノベル作家「U字」としての一面もあり、「剣と弓とちょこっと魔法の転生戦記 1~凡人貴族、成り上がりへの道~」(MFブックス)で作家デビュー。その後も、「剣と弓とちょこっと魔法の転生戦記」シリーズとして続刊を刊行中。
【募る! 職場のお悩み・体験談】
あなたの職場のお悩み、体験談を聞かせてください!
役員・上司と部下、同僚とのあいだで起こる、いじめや嫌がらせ、セクハラ、パワハラ、経理部VS営業部など部署間の対立に、お給料や休暇のこと......
働いているといろいろな出来事がありますよね。あなたのお悩みや心配事をJ-CAST会社ウォッチ編集部が取材して、スッキリ!解消のお手伝いをさせていただきす。
募る! 職場のお悩み・体験談に具体的な内容(400字程度)をお寄せいただき、あなたのご職業、おすまい(都道府県)、年齢、性別を明記してお送りください。秘密は厳守いたします。