「ウチの経営者は常識を外れている」芸人にそう思わせた吉本興業の時代錯誤な「親子」関係(大関暁夫)

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経営者に都合のいい、キレイ事でしかない

   今回の件に関連して、さまざまな情報が報道され、吉本芸人はギャラが安いのではないか、今回の事件は吉本興業のギャラの安さが原因なのではないか、という世間の批判も噴出しています。

   しかし、吉本興業の大﨑洋会長はインタビューに答えて、これには明確に反論しています。

「若手芸人たちが、先輩芸人の名前で集まった多くのお客の前で芸を見せるだけでも意味があること。自分の名前で来た客がいなくとも、プロとして舞台に立ったからギャラを渡しているわけで、世間で言われる吉本興業はギャラが安いとか、交通費を差し引いたら赤字とかいう批判にはあたらない。今回の件についても、会社側に落ち度はない」

   会長の言っている話は、企業経営者として正しい理解なのでしょうか――。一見すると、もっともらしい話にも聞こえますが、私には経営者都合のキレイ事にしか思えません。

   丁稚奉公的な観点や、職人の世界という旧時代的理解からは納得性もあるのかもしれませんが、業界を代表する企業経営者の考え方としては、大きく常識に欠けていると私は思います。

   この場合の常識とは、ひとつは業界水準を意識するということであり、さらには吉本興業について言うなら、業界をけん引する立場としてのあるべきを認識する、ということでしょう。

   組織そのものや上に立つ人の考え方や指示・命令が、常識を外れたまままかり通ってしまうと何が起こるのかと言えば、その常識外れを受け入れさせられる配下の者が理不尽という感覚を覚えることになるのです。

   そしてその理不尽を感じた者は、彼自身も常識を逸脱することへの抵抗感が薄れ、それが組織内に蔓延すれば結果的に企業のルールやコンプライアンスはことごとく破られることにつながるでしょう。

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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