女性の職場「妊娠順番ルール」破った私って悪者? 専門家に聞いた

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保育士の「結婚と妊娠の順番」を決めていた保育園長

   ところで、女性の職場の「妊娠順番制」については、2018年にも新聞やテレビで話題になった。同年2月28日の毎日新聞投書欄に「子どもができてすみません」というタイトルの投書が掲載されたからだ。投稿したのは妊娠中の保育士の妻を持つ名古屋市の28歳男性だ。妻の勤務先の保育園では、女性園長が保育士の結婚の時期や妊娠の順番を決めており、「先輩を追い抜くことはダメ」という暗黙の了解があった。

   妻は先輩より先に妊娠してしまい、男性は妻と一緒に「子どもができてすみません」と園長に頭を下げに行ったのだった。渋々了解してもらったものの、その後も「どうして勝手にルールを破るのよ」と嫌みを言われ続け、妻は肩身の狭い思いをしているというのが投書の内容だ。

   この投書を受けて毎日新聞は同年4月1日、「『妊娠の順番決め』は守るべきルールか」という特集記事を掲載した。記事によると、保育研究所の村山祐一氏は「保育園で結婚や妊娠の順番決めが行なわれるのは珍しいことではない。低賃金で長時間労働を強いられる保育士の職が敬遠され、数が足りないことが背景にある」と話す。さらに村山氏は「妊娠の順番ルールは、保育士が辞めずに経験を積む工夫とも映る」という見解を示したのだった。

「マタハラ」をされる前に自分から身を引く人が多い

   J-CASTニュース会社ウォッチ編集部では、女性の働き方に詳しい、主婦に特化した就労支援サービスを展開するビースタイルの調査機関「しゅふJOB総研」の川上敬太郎所長に、「妊娠順番ルール」について意見を求めた。

   ――今回の「妊娠順番ルール」の投稿騒ぎについて、どういう感想をお持ちですか?

川上敬太郎さん「仕事への影響というのはもちろんわかりますが、社員の妊娠に順番をつける会社を認めるような社会であって欲しくないと思いました。投稿者は、産育休を取得すると困ると言われ、退職の意思を固めていますから、明らかにマタハラに該当します。一方で、妊娠・出産によって、仕事に影響が出ることは事実です。しかし、順番を守らなかったことが良いか悪いかという問題と、仕事への影響をどうカバーするかという問題とは、切り離して考える必要があると思います」

   ――保育以外にも美容やアパレル、化粧品業界といった女性が多い業界では、そう珍しい話ではなく、中には「妊娠ローテーション表」を作る職場もあるそうです。それ以外にもSNSでは学校で「小学1年と6年の担任は妊娠しないでくれと言われた」、企業で「このプロジェクトが終わるまで妊娠しないでと言われた」といった声が寄せられています。

川上さん「決められた順番通りに妊娠することを職場側から求められるのと、従業員が自らの意思でそうしたいのとでは全く異なります。人権上の観点からも職場側から従業員に求めることは絶対に許されません。一方で、妊娠・出産によって戦力が抜ければ仕事に影響は出てしまいます。そういった場合に、従業員に妊娠しないよう求めることが慣例のようになっている職場があるのかもしれません。そういった慣例は、今後見直されなければなりません。

妊娠に順番をつけるケースは稀だと思いますが、3年前、働く主婦層にマタハラに関する調査を行ったところ、『自分を含め、周りにマタハラにあった人がいる』と回答した人が26.7%いました。この数字だけを見ると、マタハラは少なそうに思えますが、実はそのことこそがマタハラ問題の深刻さを示しています。

『自分を含めマタハラに実際にあった人は知らないが、マタハラにあうのが嫌で仕事を辞めた人を知っている』と回答した人が10.4%いたのです。つまり、実際にマタハラにあわなくても、マタハラを避けて自ら身を引いてしまう人が一定数いると推測されるのです」
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