北欧フィンランドと日本にとって2019年は、外交関係樹立100周年の記念の年。フィンランドといえば日本では「ムーミン」がおなじみだが、洗練されたデザインのファブリックや食器、家具が知られるようになり、近年はちょっとしたブームになっている。そして、この節目の年をきっかけにさらに盛り上がることが見込まれているところだ。
本書「フィンランドを知るためのキーワード A to Z」には、そのけん引役が期待されている。
「フィンランドを知るためのキーワード A to Z」(萩原健太郎、日本フィンランドデザイン協会著)ネコ・パブリッシング
「マリメッコ」や「イッタラ」がおなじみに
ファブリックの「マリメッコ」や食器の「イッタラ」などがこの数年の間に、各地の小売施設やショッピングモールなどで出店が増え、日本の暮らしのなかに溶け込んだ印象を与えている。
節目の年を迎えて、2019年3月には埼玉県飯能市にテーマパーク「ムーミンバレーパーク」が誕生。先行してオープンしていたレジャー施設「メッツア」と合わせて年間100万人の来場が見込まれており、この夏はにぎわいを見せそうだ。
「ムーミン」をめぐる施設のアトラクションは森と湖なのだが、本書によると、フィンランドは、製品デザインの洗練性やシンプルさに加えて、木に対する親和性の高さがあって、北欧の国々のなかでも特に日本人にアピールするらしい。北欧諸国のなかで日本人旅行者が最も多いのはフィンランドという。
「アルテック」今年日本初の直営店
本書は「フィンランドを知るためのキーワードを厳選」して、アルファベット順に紹介。ライフスタイルやアート、デザインのほか、サウナや独特の育児方法など、同国のユニークな文化や習慣にまで及び読み物仕立てのレポートが並ぶ。もちろん、トーベ・ヤンソンら同国を代表する人物についてもカバー。A5判の小型ムックで、オールカラー。製品のデザインのディテールを味わうグラビアとしても楽しめる。
最初の「A」のセクション、ページを開いていきなりから、つかみはオーケーだ。まず登場するのは、デザイナー「エール・アールニオ」。球状のなかに体をいれるように座る「ボールチェア」は1966年の作品だが、現代でもなお未来的だ。その次は、陶器の「アラビア」。「ムーミンクラシック」の食器で知られる。
そして家具の「アルテック」が続く。1935年の創業。4人の若者により「家具を販売するだけではなく、展示会や啓蒙活動によってモダニズム文化を促進すること」を目的にヘルシンキで設立された伝説のブランドだ。芸術性とテクノロジー、それに素材を重視した製造でも知られる。19年4月、ついに、日本初の直営店が東京にオープンした。