上場企業で早期退職者を募る動きが加速している。東京商工リサーチは2019年7月18日、2019年上半期(1月~6月)の上場企業による早期・希望退職の募集状況を発表した。
人員削減を行なった企業は17社で、募集人数は計8178人にのぼり、早くも昨年(2018年)の年間募集人数4126人(12社)の約2倍に達した=下表参照。このままの勢いだと昨年の4倍のペースになり、アベノミクスが始まった2012年以降の8年間で、最多の人数になりそうだ。
業績不振による合理化が大半だが、将来を見越して業績が好調なうちに実施する「先行型」のケースも目立つという。
アステラス製薬、中外製薬、カシオ計算機は将来を見越して
人数で最も多かったのは富士通の2850人、次いで経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)が1200人、子会社の売却、事業の選択・集中を進める東芝が1060人と続く。2018年には年間1社(日本電気=2170人)だけだった1000人超の募集が2019年に入り、すでに3社出ている。
業種別では、業績不振が目立つ電気機器が5社でトップ。次いで、薬価引き下げや国外メーカーのライセンス販売終了などを控えた製薬が4社と続く。年齢条件付での募集では、45歳以上が10社で最多だったが、40歳以上が2社、35歳以上も1社と、募集年齢の若年齢化が目立った。
一方、事業の選択と集中、人員構成の是正のため、好調な業績のうちに将来を見越した「先行型」の募集を実施した企業も出ている。たとえば、アステラス製薬は営業サポート支援や企業研修の支援を手がける子会社の再編に伴い、早期退職者を募った。対象者は、創薬研究や社員研修を支援する子会社に移ることになる。同社は「業績の良い悪いとは関係なく、社内業務の効率化を図る」としている。
中外製薬は2018年12月期に過去最高の営業収益を上げながら、薬価改正など今後想定される業界の変化に対応するため、早期退職者優遇措置を実施した。
カシオ計算機も2019年3月期は最終利益が13.1%増と好調だが、社員の平均年齢が46歳と完全な「逆ピラミッド型」の年齢構成になっており、均等化が長年の課題だった。同社は「1980~90年代初めのピーク時に1年で500人規模の採用を行なった年もあり、年齢構成に偏りができた。予算を潤沢に計上できるうちに制度の実施に踏み切った」としている。
毎日新聞は200人を募集
また、上場企業ではないが、パイオニア(=上場廃止、人数不明)と毎日新聞(200人)も早期希望退職者を募っている。
なお、今回の調査には入っていないが、今年7月以降も融資書類改ざんが発覚し、関東地方整備局から7日間の業務停止命令を受けたTATERU(募集人数160名程度)、生産拠点の集約を公表したキョウデン(募集人数未定)が希望退職の募集を行うことを公表しており、企業数、募集人数はさらに上積みされる可能性がある。