イギリス・ウェールズ地方の小さな町「ハーレク」が、歓喜に沸いています。町内の郵便局に通じる坂道がこのほど、「世界で一番急な坂道」としてギネス世界記録に認定されたのです!
住民の熱意でようやくたぐり寄せた悲願の世界記録。それにしても、スキー場の上級者コースを越える急勾配での生活は何かと苦労がありそうですが、ギネスに認定されるとどんないいことがあるのでしょうか?
世界一の急坂は「インスタ映え」スポット!
英国のハーレクにある最大勾配37.45%の坂道「フォース・ペン・スレック」が、ギネス世界記録の「世界で最も急な通り」に認定されました。
これまでの記録はニュージーランドのダニーデンにある勾配35%「ボールドウィン・ストリート」でしたが、「こっちの坂のほうが急だ!」という住民たちの活動が実り、世界一の座を奪ったと報じられました。
Wales claims title of steepest street in the world from New Zealand
(ウエールズが、「世界で一番急な坂」の座をニュージーランドから奪った)
claim title from~:~からタイトルを奪う、~から王座を奪う
35%を超える勾配は、スキーの上級者コースを越える急傾斜です。「前王座」のニュージーランド「ボールドウィン・ストリート」の長さは350メートルを超え、坂の上から下までの高低差は70メートル近くあるとか。通り沿いには34軒の家が建っているそうですが、写真ではまるで家々が傾いているように見えます。
「ボールドウィン・ストリート」は、通りを上り降りするだけでも息が上がりそうな急勾配ですが、じつは、「インスタ映えスポット」として世界中から観光客が訪れる「観光名所」として、その名を轟かせていました。
これに異を唱えたのが英ウエールズ地方のハーレクの住民。「こっちの坂のほうが急だ!」と、主張して専門家に測定を依頼。1年近くに及ぶ厳しい審査を経て、ようやくギネスの世界記録として認められたと報じられています。
ハーレクは古城で有名な風光明媚な町ですが、ギネス認定を機に「インスタ映え」を狙って世界中から観光客が殺到するのでしょうか。
ちなみに、ハーレクの住民によると、「ここに住んでいると駐車がめちゃくちゃうまくなる」とか。急坂で途方に暮れている観光客を助けてあげることも多く、「どの家にも、お礼でもらったワインやビールがたくさんある(笑)」そうです。今後は、ワインやビールをもらう機会が増えることでしょう。
「この借りはラグビーで返す!」舌戦がヒートアップ
一方、記録を破られた側のニュージーランドでは、「世界的に注目されていたのに」「憤慨だ」といった声が上がっています。「World's Steepest Street」(世界で最も急な道)をウリにして「インスタ映えスポット」をアピールしていただけに、ショックも大きいようです。
個人的には、くねくねと曲がりくねったウエールズの道よりも、スキーのジャンプ台のような坂道がまっすぐにのびて、その両脇に住宅が並んでいる「ボールドウィン・ストリート」のほうが「インスタ映え」という点では上回っていると思います。
報道によると、両国の間で、「ニュージーランドには気の毒だが、急なものは急なんだ!(ウエールズ)」、「9月のラグビーワールドカップでこの借りを返してやる!(ニュージーランド)」といった「the war of words has begun」(舌戦が繰り広げられている)そうです。
それでは、「今週のニュースな英語」はこの「the war of words」(舌戦)を取り上げます。口頭で議論が巻き起こっている場面で使います。
The war of words between them escalated.
(彼らの舌戦はどんどんエスカレートした)
We battled a war of words.
(私たちは舌戦を繰り広げた)
This movie has sparked a war of words.
(この映画は議論を巻き起こしている)
This movie has sparked a war of words between young and old.
(この映画は、老若男女すべての人の間で議論を呼んだ)
「世界で一番急な坂」をめぐる戦いがラグビーにまで発展するとは、思わず笑ってしまいますが、「インスタ映え」を狙う観光客はどちらの坂を選ぶでしょうか。南半球と北半球の小さな二つの町が繰り広げるアツイ戦いはまだまだ続きそうです。(井津川倫子)