国民的駄菓子に対するリスペクト前提
ぬれ煎餅の事業も取り組みを始めてから20年以上。竹本さんが何か新商品はないかと思案していた2年ほど前、銚子電鉄に関心を持ちイベントなどで協力していた寺井さんが「まずい棒」はどうかともちかけてきた。銚子電鉄の歴史を振り返ると、じつは「まずい」ことばかり、という意味のネーミングだ。1913年(大正2年)に銚子遊覧鉄道として開業以来、廃業、会社解散、身売り、赤字続きと、おいしいことはほとんどなかった。竹本さんは「スゴイおもしろいアイデア」と身を乗り出したという。
名前が「まずい棒」でも、ほんとにマズくちゃ売れないなどと、さまざま議論を重ね商品化が具体化したのは2018年。しかし、最後に関門がある。「とてもうまいあの国民的駄菓子を手がけているY社さんに仁義を通さなければ」ならない。竹本さんと寺井さんは、Y社に対し電話や訪問を繰り返し「あくまでも先行商品に対するリスペクトを前提としたオリジナル商品」と説明して理解を得られ発売にこぎつけた。
ぬれ煎餅ヒットの前例や、ネーミングの妙、さらには、販売開始を「8月3日18時18分(831818=破産いやいや)」と、語呂合わせでピンポイント化したことでメディアでの報道もスケールアップ。同日と8日の2回に分け1万5000本ずつを入荷することにしていたが、翌日の午前中で初回入荷分が売り切れ、遠方から駆けつけたのに買えない人が多数いたという。