【IEEIだより】福島レポート 揺れる個人情報の「境界線」 災害と医学研究 災害時の情報収集と法律・ガイドライン(2-1)

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個人情報保護法の例外規定と「医学研究の倫理指針」

災害時の個人情報の取り扱い、どうする!?
災害時の個人情報の取り扱い、どうする!?

   これだけ聞くと、個人情報保護法は医学研究を著しく阻害するかのように思えるかもしれません。しかし、実際には個人情報保護法には「例外規定」というものがあり、マスコミ・著述業関係、大学等、宗教団体や政治団体が、それぞれ報道・著述、学術研究、宗教活動、政治活動の目的で個人情報を利用する場合は、個人情報保護法の適用外とみなされます。

   つまり、医療においては、大学等が学術研究目的で患者さんのデータを使用する場合には個人情報保護法に従わなくてよい、ということになります。

   とはいうものの、医療情報の扱いを単なる例外規定として放置するわけにはいきませんので、医学研究については別途「人を対象とする医学研究に関する倫理指針」1というものが設けられています。医学研究を行う場合にはこの指針に従わなければなりません。

 

   この指針でも、基本的には個人情報を第三者提供する時には患者さんの同意が必要とされています。しかし、いくつかの条件を満たせば、患者同意の簡略化、すなわち

(3) 患者さんに通知をして、データ提供を拒否されなければデータを提供できる(オプトアウト)

という方法で情報収集ができます。

   このオプトアウトという方法は、インターネットで買い物をした時などによく目にします。Webページの末尾に「今後広告メールを受け取る」という項目があり、積極的にチェックボックスからチェックを外さなければそれ以降広告メールが届く、という経験をされた方も多いと思いますが(3)の方法はそれに近いものです。(越智小枝)

(つづく)

越智 小枝(おち・さえ)
1999年、東京医科歯科大学医学部卒。東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科。東京都立墨東病院での臨床経験を通じて公衆衛生に興味を持ち、2011年10月よりインペリアルカレッジ・ロンドン公衆衛生大学院に進学。留学決定直後に東京で東日本大震災を経験したことで災害公衆衛生に興味を持ち、相馬市の仮設健診などの活動を手伝いつつ世界保健機関(WHO)や英国のPublic Health Englandで研修を積んだ。2013年11月より相馬中央病院勤務。2017年4月より相馬中央病院非常勤医を勤めつつ東京慈恵会医科大学に勤務。
国際環境経済研究所(IEEI)http://ieei.or.jp/
2011年設立。人類共通の課題である環境と経済の両立に同じ思いを持つ幅広い分野の人たちが集まり、インターネットやイベント、地域での学校教育活動などを通じて情報を発信することや、国内外の政策などへの意見集約や提言を行うほか、自治体への協力、ひいては途上国など海外への技術移転などにも寄与する。
地球温暖化対策への羅針盤となり、人と自然の調和が取れた環境社会づくりに貢献することを目指す。理事長は、小谷勝彦氏。
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