【IEEIだより】福島レポート 揺れる個人情報の「境界線」 災害と医学研究 災害時の情報収集と法律・ガイドライン(2-1)

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   被災地の情報共有の在り方、個人情報の取り扱いにつき、しばしば、

「法律やガイドラインに従っていなかった=研究者個人の人道的な罪である」

というような非難を耳にすることがあります。

   しかし、こと個人情報に関しては、法律やガイドライン守ることと人道問題はまったく別のものです。時勢に合わせて変化する法やルールをアップデイトできず、組織内で手続きの一部が古い体制で運用されてしまった、というようなケースもしばしばみられます。

   どんなルールでも、違反は取り締まられるべきなのかもしれません。しかし、その際にそれがどのような部分のどの程度の違反なのか、ということを認識せず、十把一絡げに糾弾されるべきではない、と私は思います。また法やガイドラインを守ったからといって、その内容が人道的であるとも限りません。

   そこで、まず患者さんや住民の情報提供は、どのようなルールに従って行われるのか、災害時にそのルールに従うことの難しさについて解説してみます。多少読みづらいかもしれませんが、是非、医学研究者以外の方にも知っていただければと思います。

  • 復興への道のりはまだまだ……(写真は、福島県いわき市周辺)
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個人情報保護法と医療情報にみる「研究以外の目的による情報提供」

   2003年に施行された「個人情報の保護に関する法律」、いわゆる個人情報保護法は、誰もが一度は耳にしたことのあるのではないかと思います。この法律の本来の目的は、個人情報を保護しつつ、かつ情報の利活用を促進するというものでした。

   しかし、前者の保護の点に重点が置かれすぎた結果、後者の利活用については、むしろ法が障壁になっている、という印象を受ける方も多いのではないでしょうか。

   この個人情報保護法が2017年に改正され、医療情報の取り扱いが以前に増して厳しくなりました。簡単に言えば、研究ではない目的で患者さんの情報を第三者に提供する場合には、

(1)その情報に含まれる患者さん全員に同意を得る(オプトイン)
(2)その患者さんであることがわからないような、しっかりとした処理(匿名加工)を施す

のいずれかの手続きが必要とされたのです。

(1)同意取得について

   患者さんや住民の方から同意を得る場合、同意書には情報の使用目的が詳細に記載されている必要があります。たとえば研究であれば以下のような項目が必要です。

・情報の利用目的及び利用方法
・他の機関へ提供される場合はその方法
・提供する情報の項目・利用する者の範囲
・情報の管理について責任を有する者の氏名
・同意撤回の機会と方法

   この項目のいずれかに大きな変更があった場合には、患者さんの同意を取り直さなくてはいけない可能性があります。つまり、一度同意を得て収集した情報でも、別の機関に提供しよう、あるいは別の解析に用いよう、という場合には、倫理審査にかけた上で同意を取り直さなければいけない場合があります。ただし、倫理審査によってはこちらの同意は、オプトアウト(利用者が承認していない状態で、情報を外部利用すること)という方法を取ることができます。

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