ビジネスシーンでは、「仕事が速い」という表現を使うことがあります。仕事のクオリティも大切ですが、それ以上に評価されるポイントがスピードです。「仕事が速い」=「仕事の効率がよい」という評価につながるため、「仕事がデキる人」と思われやすいのです。
一方で、「仕事が遅い人」もいます。根本的な仕事の段取りを知らないからです。
「仕事が早く終わる人、いつまでも終わらない人の習慣」(人材コンサルタント 吉田幸弘著)あさ出版
仕事の段取りとはなんなのか?
ここであるケースを設定します。
あなたは大手通信系企業S社の社長秘書です。S社は業界でも5本の指に数えられる大企業。7月のある日、社長に呼び出されました。
「A総理を表敬訪問したいのだが第一秘書のN氏に面会依頼の連絡してくれ」
「先日、パーティーで名刺交換をしたんだ」
と名刺を渡されました。
あなたは、N氏にどのように連絡しますか――。
多くの人が、A総理と会いたがっているなかで、たった1回しか名刺を交換したことがないN氏に連絡するには、それなりの理由が必要になります。通常のアポイントであれば、スルーでしょう。スルーされるくらいなら連絡すること自体に意味がありません。さて、どうしましょう。
私なら、相手が「イエス」と言うしかない提案を用意すると思います。
「A総理の後援会に寄付をする」
「政策実現のための投資をする」
などが考えられます。
選挙が近いようであれば、「国内の雇用を増やすために出資をする」などがメッセージになるかもしれません。このメッセージがうまく伝われば、アポイントにつながることは難しくないはずです。
もちろん、何の見返りもなく出資をするわけではありません。通信インフラの整備や規制緩和に関する話などを持ちかければ、チャンスが巡ってくることが予想できます。要はアポイントの前に勝負をつけてしまえばいいのです。
上司の「動き」を把握する
私が経験した仕事で、次のようなものがありました。メーカーA社は国内を代表する企業で東証1部に上場しています。業績悪化で採用が2年間凍結されていました。人事部は採用を再開したいのですが大義がありません。私はA社の会議である質問をしました。「採用凍結を決定したのは誰ですか?」。結局、誰が言い出したかわかりませんでした。
全員が、「業績悪化 → リストラ → 採用凍結」という思い込みだったのです。
翌週、採用再開の報道が流れると、採用代行業者の営業マンが押し寄せます。ベンダーを交えた会合があり、私は人事部側に着席しました。人事担当者は、「今回の採用は尾藤さんに任せたのであとは指示に従ってください」と話して席を立ちます。
その場が紛糾したので日を改めることにしました。最大手の就職サイトを運営するL社は、担当役員の常務が、事業部長、技術責任者など数名を引き連れてきました。私は人事部側に着席します。各社はディテールの提案をしてきました。私は、各社がディテールを提案する前に「YES」の言質をとっていました。
仕事が速い人の特徴はいくつかあります。大きな特徴として表れやすいのが「先読み」です。たとえば上司の指示で、急ぎの資料作りがあるとします。時間に関係なく呼び出しがあるかもしれません。この時に連絡がつかずに不在だと、使えない部下の烙印を押されてしまう危険性があります。理不尽ですが仕事とはそういうものです。
私ならホットラインを伝えておくでしょう。これだけでも、上司の評価は違ってくるはずです。仕事が速い人は、上司の予定を先読みして行動します。同時に上司のスケジュールも把握しています。
部下が、上司の動きを把握していれば、パフォーマンスの高い仕事が期待できます。資料作成も完成度が高いはずです。
あなたは、仕事が速いですか? 仕事を手掛ける順番、考え方、判断軸などをちょっと変えるだけで、仕事時間は急激に減ります。仕事を抱え込む体質から脱却しなくてはいけません。この機会に振り返ってみては如何でしょうか。(尾藤克之)