大統領選に向けて、ドル安警戒
一方のトランプ米大統領、最大の目標は大統領選での「再選」です。政策の正当性、継続性よりも、見映えのする行動が大事です。それが明確になったのは、G20大阪サミット後に急きょ設定された「米朝会談」です。
米朝会談で何が話し合われたのか、それはまったく不明ですが、38度線を超えて、トランプ大統領と北朝鮮の金正恩労働党委員長が手を携えて進んで行った光景は感動的ですらありました。
しかし、その前の2回目の会談で、核を破棄しない金正恩委員長に対して見返りをあたえないと、トランプ大統領は突然席を立ったのです。その毅然とした態度は、当時称賛されました。しかし今回の行動と、どのような整合性があるのでしょうか。北朝鮮は何の譲歩もしていないのに、トランプ大統領は38度線を超えてやってきて、しかも米国に金委員長を招待するとまで言いました。
ここまで行動が違うと、今後の日本経済が心配になってきます。北朝鮮は核を保持したままでも、部分的に制裁解除してもらえる可能性が出てきています。ライトハイザー氏やムニューシン氏らは、トランプ大統領が変な方向に行かないように、なだめすかしコントロールする役目なのでしょう。
そうなってくると、トランプ大統領が次に何を仕掛けてくるのか、それを読むことが大事になってきます。株式や為替の相場も、その方向で決まるのでしょう。彼が一番望んでいるのは「再選」です。よって、勝てるような経済環境をつくろうとするでしょう。
できることは、米国金利を下げさせ、株価を上昇させること。そして、その過程でドル安にもしたい、ということになります。
そんなにうまくいくのか、疑問もありますが、トランプ大統領はすでに米連邦準備制度理事会(FRB)内を金融緩和派でまとめようとしています。最近、ことあるごとに欧州や中国を「為替誘導している」と非難しているのも、単なる思いつきではなく、ユーロや人民元を持ち上げ、ドルを下落させようとしているだと思われます。
大統領選挙に向けて、ドル安警戒でしょう。(志摩力男)