経営権を巡って混乱が続いた住宅関連総合企業のLIXILグループの株主総会が2019年6月25日に開かれ、形のうえでは株主側提案が賛成多数で会社側提案に勝利するという結果になりました。
事の発端は、昨年10月。LIXIL会長でグループ中核企業であるトステム(旧トーヨーサッシ)創業家である潮田洋一郎氏が、同社の指名委員会を動かして瀬戸欣哉社長を更迭し、自身が会長に就任する人事を決めたことにあります。
快く席を譲るのが「プロ経営者」ではないのか
LIXILはお家騒動が勃発して以降、株主である複数の海外機関投資家が、潮田氏自身が委員を務める指名委員会を意のままに動かした、この人事はおかしいと、潮田氏の解任を求め臨時株主総会を開くことを要請。これを受けて、会社側は潮田氏と瀬戸氏の後任社長である山梨広一氏が、急遽すべての役職からの退任を発表します。
もちろん、潮田氏のやり方に問題があったのは明らかですが、同時に私が問題に感じているのは、潮田氏の辞任発表後に再度トップ復帰に意欲を見せて株主提案に名を連ねた瀬戸氏の対応です。瀬戸氏は、オーナー家の潮田氏と経営方針を巡って行き違いがあり、突然社長を解任されたわけですが、氏は件の指名委員会決定を受けて社長の座を解かれた取締役会後に「これはおかしい」(雑誌インタビューでの発言)と思いながらも退任会見に同席して「快く席を譲るのはプロ(経営者)の心得だ」(日本経済新聞)とまで言って去り際の潔さを見せていたにも関わらず、自らへの追い風と見るや突然社長ポストへの固執をみせたわけです。
株主総会の大きなテーマは、潮田氏が犯したガバナンス不全の組織運営改善と、赤字決算からの事業立て直しです。潮田氏退場後の会社側取締役候補は、8人中7人までを社外取締役とする構成で、特にガバナンス強化を強調したものでした(一部で潮田氏の影響力の完全排除を危惧する声がありましたが、大企業などで実績を積んだ社外取締役が大半を占める役員構成でそれは杞憂に過ぎないと、個人的には判断します)。
ところが、それに対抗して提出された株主提案で、一たん「快く席を譲った」はずの瀬戸氏が役員候補の筆頭に再び登場したことで、一気に瀬戸氏の会社に対する復讐戦と化してしまったようなのです。