お墓を撤去したり、永代供養墓に改葬したりなど、いわゆる「墓じまい」の需要が拡大の一途だ。
墓石会社のなかには、専門のノウハウを生かして、この墓じまいを新たな事業に加えるところも少なくないが、利用者には値段の不透明さがあった。そこで業界大手の「株式会社まごころ価格ドットコム」では、価格をガラス張りにするなど差別化を打ち出した。
パックで19万8000円
まごころ価格ドットコムは、2010年に初のインターネット墓石店としてオープン。カタログ通販ゆえの低価格と、多彩なデザインと石材を組み合わせてオーダーできるシステムで業績を伸ばしてきた。墓石の大半は中国で加工され日本各地に運ばれる。サンプルなどを使っての商談より効率的な運営が可能だった。
墓じまいの事業を始めたのは2016年から。ネットや電話での相談、申し込み受付が中心だったが、墓石・霊園事業などを行う企業グループである「ランドワークグループ」に参画し機動力が高まった。
同社営業部の本間一彰課長によると、墓じまいに関する問い合わせは16年には約800件、17年には1600件と倍増。18年には3500件と4倍を超えた。激増の理由は、墓じまいをめぐる相場が不透明で、役所とのやりとりや「離檀」、「魂抜き」もあり、手の付け方がわかりにくいことにあった。
これまでの反響を受け、同社では2019年を「墓じまい元年」とし位置づけ、その「目玉」に掲げたのが「価格の明快化」。同社では16年の事業開始当時から、業界で初めて価格の明示を決断し実行していたが、、需要の高まりを受け、前面に押し出し、増えてきたライバル社との差別化を打ち出した。
市区町村に提出する「改葬許可申請書」の提出代行と遺骨取り出し(2人まで)、墓石の解体・撤去をパックにして、墓地の大きさが「2平方メートル未満まで」を全国一律で19万8000円(税別)に設定。面積が広くなるに応じて、さらに上に3段階の設定をした。
パック以外で、墓じまい後の永代供養墓、納骨堂、散骨、樹木葬などの相談や紹介にも応じている。
本間課長によると、同社の顧客に限ってはこれまで「離檀」が問題になったケースはなく、檀家として寺と普通の関係を保っていればトラブルは起こりえないのではないかという。
厚生労働省の統計データである「衛生行政報告例」によると、2014年度に8万3574件だった改葬数は、15、16年度は9万件を超え、17年度は10万4493件だった。