創業者が明かした なぜリッツ・カールトンは「世界一」になれたか(気になるビジネス本)

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モンスター顧客にも知恵を絞れば...

   シュルツ氏は14歳のときに、故郷の村を離れてホテルでの仕事を学ぶための寮制の学校に通い、保養施設でホテルマンとしてのキャリアをスタートさせる。幼いころからホテルで働くことを天職のように考えていたようで、灰皿の片づけなどの下働きのころから人を良く観察していた。その経験から「苦情対応の基礎の基礎」を構成した2時間の講座を設け、全従業員に受講を義務付けている。大事なことは、粘り強く顧客の信頼を得るよう努めることという。

   しかし苦情の主のなかには、いわゆるモンスター的な顧客もいる。「知恵を絞れば何かしら創造的な方法が見つかる」とシュルツ氏。あるモンスター顧客は、暴力をふるうなどのすえ「訴えてやる」と叫んだ。シュルツ氏が、法廷では従業員が証言することになると応じると、この相手は黙ってしまったという。

   ザ・リッツ・カールトンはシュルツ氏を迎えた5年後の88年に、全世界にわたるリッツ・カールトンの商標権を獲得。その後、97年に、大阪で開業して日本進出を果たした。翌年にマリオット・インターナショナル傘下に入り、世界展開を加速させ、日本でも2007年に東京、12年に沖縄、14年に京都でオープン。20年には栃木・日光、北海道・ニセコ町、22年には福岡での開業を予定している。

   シュルツ氏は、リッツ・カールトンが成長途上の1992年に「すべてのがんのなかで1%しかない」という悪性の腫瘍の診断を受け絶望の淵に追いこまれた経験をした。手術は成功し術後も順調で、しばらくのちにはフルに仕事に復帰した。本書冒頭のホテルマンとしてスタートするまでの辛抱の物語と、この闘病の物語は、ビジネス書にはめずらしいといえる味わいを添えている。

   シュルツ氏は2002年にリッツ・カールトンを離れ、ウルトラ・ラグジュアリーホテルであるカペラ・ホテルグループを立ち上げた。18年6月、シンガポールの同ホテルで、トランプ米大統領と金正恩・朝鮮労働党委員長による「歴史的」米朝首脳会談が行われ、施設についても詳しく報じられた。本書では、カペラ・ホテルグループの24項目からなる「サービス・スタンダード」を紹介。その内容は、サービス・ホスピタリティーや接客を重視する飲食業の業界でも参考になるだろう。

「伝説の創業者が明かす リッツ・カールトン 最高の組織をゼロからつくる方法」
ホルスト・シュルツ、ディーン・メリル著/御立英史訳
ダイヤモンド社
税別1600円

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